第0章5幕
地下にあるトレーニングルームにやってきました。
【レガシータスク】をきちんと装備したレーナンが待っていました。
「おまたせしました。ちょっと武器を一つ制作してました」
「いえいえ! すごいですねこんな設備まであるなんて」
トレーニングルームの『簡易結界』のことでしょうか。
「これがないとスパーリングできませんからね」
『簡易結界』は結界を展開することができる設備です。
これがあるとクールタイムを0に設定することができたり、HPが0になってもデスペナルティーなしで蘇生できるメリットがあります。
「今回はある程度の実践を想定しますので、『簡易結界』の設定は、デスペナルティーの解除、だけですがよろしいですか?」
「はい!」
「では少々お待ちください。私も装備を変えますので」
装備セットから『戦闘用』と書いておいたセットに転換します。
それと【機械怪鳥の片翼】をインベントリから装備します。
現在の装備はこんな感じになりました。
防具
頭 :【マギステルグラス】
肩 :【アルティナローブ】
腕 :【アルティナローブ】
右手:【イナーシャグローブ】
左手:【イナーシャグローブ】
胴 :【アルティナローブ】
腰 :【アルティナローブ】
腿 :【アルティナローブ】
右足:【ブリザードブーツ】
左足:【ブリザードブーツ】
武器
右手:【ナイトファング】
左手:【ペインボルト】
特殊装備品
【機械怪鳥の片翼】
となっています。
「準備できましたのでいつでもどうぞ」
「はい!」
すーすーと呼吸をととのえレーナンがスキルを発動させます。
「≪光の一閃≫っ!」
そう来ましたね。
右手にもった【ナイトファング】で受け止めます。
「AGIの上昇がいいですね。なかなか早いです」
スキルで加速した一撃を受け止められたレーナンが距離を取り、≪闇の一閃≫を発動しようとしています。
「≪闇の一閃≫」
でしたら……
「いきますね」
一言声をかけ、≪闇の一閃≫の効果範囲に入ります。
効果範囲に入った瞬間、後方に移動してきたレーナンに左手の【ペインボルト】を突きつけます。
「おしいですね。AGIがある程度無いと即死級です」
次はどう出てくるのでしょうか。
対人戦の面白いところは力量差があっても知恵と装備品の使い方次第では一矢報いることができることだとおもっています。
レーナンのAGIは先ほど見た時点で、150程だったので、補正が入り170と言ったところです。
通常の攻撃やスキルは完全に見切れますが、≪光の一閃≫が発動された場合、私のAGIを上回ってくるので、一太刀貰うことになります。
暗殺者系を収めていなかったらまずかったかもしれないですね。
そろそろ攻撃に移りますか。
っとその前に……。
「≪輝く軌跡≫」
これで直線の移動しかできませんが速度だけならかなり早くなりました。
方向転換ができれば言うことなしですが。
方向転換……?
開きっぱなしだった装備メニューから【機械怪鳥の片翼】の項目を選びます。
なるほど。
これは試す価値がありそうですね。
少し大人げないですが、それが試し撃ちです。
「≪アンチ・グラビティ≫」
STRが100制限されたのでHPの最大値が15630まで減りました。
これでパッシブスキル≪フライト・レギュレトリー≫が発動します。
これで条件は整ったはずです。
「それでは次は私からいきますね」
地面を蹴ったりはしていないですが前進します。ちょっと横にも移動できるかやってみましたが、正面を向いたままスルスルとうごきます。
なんと楽な……!
私の操作しているキャラクターに自我があったならそう言ったはずです。
私のAGI×2倍ほどの速度で移動しているように感じます。
これなら身体を動かさずに移動ができます!
VRでも楽できる!
そうでしたスパーリングの途中でしたね。
高速で移動する私に翻弄されているのか特に行動を起こすようには見えません。
ちょっと楽しいのでこのまま周りを飛んでみますか。
「≪闇の一閃≫っ」
なるほど。ですがこのスキルには大きな欠点が2つあるのでレクチャーしておきます。売った側としては当然です。
「そのスキルには2つ大きな欠点があります。一つ目は先ほど見せたように、『視界から消えた場合後ろを警戒しろ。』これを実行されること。二つ目は……」
言いながら左手の【ペインボルト】のスキルを発動します。
「≪サンダー・ボール≫」
するとレーナンのキャラが消え、≪サンダー・ボール≫の後方に現れます。
レーナンの首元に【ナイトファング】を突きつけます。
「自身より先に何かを飛ばし、そちらに飛んだ瞬間背中はがら空きになる。ということです」
レーナンは地面に座り込み「参りました……」と呟きます。
「参考になったのなら良いのですが」
「はい……ありがとうございました」
「いえ。私でよければいつでもスパーリング相手になりますよ」
「しばらくは遠慮します……」
ちょっとしょげてしまいました。
えっ? 手加減したほうがよかった?でもそれじゃ為にならないし……。
「ではまりりすさんもスパーリングしましょうか」
「えっ? 私もですか?」
「せっかくですので」
そうだそろそろ完成した頃かもしれないですね。あの作業台は作成時間を短くする効果が付与されていますし。
「少々お待ちを……」
取りに戻ろうと思ったら入口にステイシーが立っていました。
「やぁチェリー。きたよー。これを取りに行くところだったのかなー?」
「さすがステイシー。よくわかってるね」
「長い付き合いだからー。なかなかいいブックだね」
「そうかな?」
【ヘブンズアリアス】
武器効果:回復量ボーナス
消費魔力減少
武器固有スキル:≪中級聖属性魔法≫
≪ホーリー・ヒール8≫
二個ずつしかつかなかったみたいです。
売り物にもなりませんね。
「ステイシーこれ弱くない?」
「はははー。ご冗談をー。なかなか強いよー。僕が保証するー」
「ステイシーがそういうのなら……」
「スパーリングする前にまりりすさんにこれを差し上げます」
先ほど出来上がった駄作をあげるのは忍びないですが、どうせ売り物にもなりませんので。
「えっ? いいんですかこんなユニーク武器いただいちゃって」
「かまいませんよ。あっそうだステイシー。この子に合いそうな杖の余りってない?」
「うーんとー。うんーあるねー」
「どれ?」
「これー」
【天使長の指揮棒】
装備効果:装備中の武器、防具のスキルレベルを1上げる
MND+30 STR-30
武器固有スキル:≪ヒール9≫
≪上級聖属性魔法≫
≪スピアシェイプ≫
これはなかなかいい武器です。
ステイシーを壁際まで追い込みます。
「ステイシーこれ売って。600万金」
「うーん。20万金でいいよー」
「安すぎる。800万金」
「装備するのはあちらのお嬢さんでしょー。ならあちらのお嬢さんに直接売るよー。『セーラム』が赤字でつぶれるのは嫌だしー」
「そういうことなら……」
ステイシーはそう言って、とことことまりりすのほうに歩いていきます。
「やーやーお嬢さんー。この杖20万金で買ってくれるかなー?手持ちのお金がなくてここで買い物できないんだー」
そう言って先ほどの杖を見せています。
「えっ? いいんですかこんなユニーク武器格安で購入さえていただいて」
デジャブですね。
「いいよー。僕にはもう必要ないものだからー」
「ありがとうございます!」
「所有権もリセット済みだからすぐに装備できるよー」
装備メニューを出しすぐに装備するまりりすにちょっと懐かしさを覚えながらスパーリングの準備をします。
「チェリー。魔法だけで戦ってみたらー?」
おっとりした顔で何を言い出すのでしょうか。
「さすがに無理、魔法スキル付きの武器ほとんどもってない」
「そういうとおもってー。これプレゼントー。こないだくれたユニークスキル付きの本のお礼ー」
「そういうことなら……」
武器を見て唖然とします。
【神器 プルトーン】
装備効果:MND+100 INT+100
消費MP90%減少
消費EN100%減少
光、聖属性ダメージ200%増加
武器固有スキル:≪絶級闇属性魔法≫
≪アームシェイプ≫
≪【見えざる手】≫
恐ろしい性能の武器です。
神器なんて久々に見ました。
「ステイシー。さすがにこれは受け取れない」
「正直いうとねー? これよりこないだチェリーがくれたブックのほうが凄まじいよー。そのせいでこれいらなくなっちゃったー」
「それはないよ」
「いやいやー絶級スキルが二個あってさらにユニークスキルが二個付いた武器は今も昔もあれだけじゃないかなー?」
あの武器はそんなにすごいものじゃなかった気がします。
【神器】を砕いて素材にしちゃいましたけど。ハンマーとかいらないです。
「じゃぁもらうね。今度あの武器以上のものができたらわたすね」
「そのときはよろしくー」
【神器】は同系統のなかで好きな形状に変えることができます。
私はとりあえずリングを選択しておきます。
気に入らなかったら変えればいいのですから。
「魔法系装備にするのは初めてです」
ステイシーから譲ってもらった【神器 プルトーン】を装備し、シナジーが期待できそうな武器の【古代の呪術書】を装備します。
【古代の呪術書】
装備効果:自身が発動する闇属性魔法のダメージを50%増加する
武器固有スキル:≪中級闇属性魔法≫
≪エンチャント≫
単独でみたら弱い武器だと思いましたが【神器 プルトーン】と同時に使うにはうってつけですね。
市場では売れもしないMOBドロップでしたが役に立ちました。
「準備できました」
「私も大丈夫です」
まりりすも装備のチェックや作戦が練り終わったようです。
「じゃぁいちについてー。よーい……どーん」
ステイシーの掛け声を聞いてすぐに魔法を編みます。
「≪ダーク・アーム≫」
闇属性魔法で≪アームシェイプ≫を取ってみました。
「≪【見えざる手】≫」
今回は試し撃ちなので1本にしておきます。
このユニークスキル≪【見えざる手】≫は実体、非実体にかかわらず、持つことができる手を召喚する魔法でした。
なので非実体の≪アームシェイプ≫にした魔法も握れるみたいです。
「闇属性魔法が剣の形をして浮いてるんですか?」
レーナンがステイシーに聞いています。
「そうみたいだねー。チェリーとしては楽でいいかもしれないねー」
「……ッ! ≪ピュリフィケージョン・スピア≫」
まりりすが放つ聖属性魔法がランスの形態をとり、私が召喚した手に勢いよく刺さります。
闇属性魔法なので光属性と聖属性に対して非常に相性が悪いですね。
これっぽっちも動きません。
でも……武器補正でMNDが150を超えたことにより≪絶級魔法≫が放てるようになっているので問題ありません。
「≪シャドウ・フレア≫」
絶級魔法では他属性を含む複合属性魔法が使えます。≪シャドウ・フレア≫は闇属性+火属性ですね。
「≪フラッシュ・シールド≫≪ホーリー・シールド≫」
闇属性魔法に対してまりりすは光属性と聖属性の障壁を張ることで防ごうとしているようです。
2枚のガラスが割れるような音が響き、まりりすが膝をつきました。
「降参です」
「ありがとうございました」
「二人ともお疲れ様ー」
ペチペチ手を叩きながらステイシーが中心まで歩いてきます。
「まりりすさんだっけー? いい障壁魔法だったよー。≪シャドウ・フレア≫の闇属性は完全に消し切ってたねー」
やはり消されていたみたいです。
まりりすには後衛の素質がありますね。
いい障壁魔法でした。
「いえ……まだまだです」
「いやーそんなことはないよー?」
ステイシーがこちらを見て言います。
「僕に≪シャドウ・ボール≫撃ってみてー」
突然なのでよくわかりませんが障壁の強度の問題かな?とりあえず撃ってみます。
「≪シャドウ・ボール≫」
2秒と掛からず、ステイシーに直撃します。
もう一度言います。
直撃しました。
≪シャドウ・ボール≫が直撃したステイシーは全身が粉々になり結界の壁にグチャっとなっていました。
画面越しでなかったら確実に吐いてます。
これをVRで見るのはキツイですね。
すぐに蘇生してきてケロっとしていましたが私のショックはかなり大きいです。
「とまぁこんな感じで障壁張ってなかった木っ端みじんになっちゃうわけだよー」
さっきより威力の低い魔法だったけどー、と付け足しています。
「絶級の魔法を中級と上級の2枚の障壁で防げたのはすごいよー。みててー」
「チェリー」
名前が呼ばれたのでステイシーのほうをチラッとみました。
「≪サンダー・フェニクス≫」
えっ? はっ?
「≪シャドウ・シールド≫」
とっさに闇属性の障壁をはりました。
パリンという軽い音がなり、私の眼前を雷の不死鳥が覆い尽くしています。
「きゃあああああああああ」
死にました。
それも確実なオーバーキル。
HPの数十倍のダメージはありましたね。
「いきなりびっくりするじゃん! 何するの!」
私がこんなに叫ぶなんて珍しいこともあったものです。
「障壁の大事さを逸材に教えようと思ってねー」
「一言言ってからやってよ!」
「だって言ったらおもしろくないでしょー」
ぐぬぬ……その通りです……
それから数十分ほどステイシー先生の魔法講義が開かれて何度も塵になりましたが、為になったので良かったです。
魔法怖い……。
to be continued...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます