第27話
27 リア充、外神涼介
「宮坂、大丈夫か」
「はい……お陰様で」
気丈に振る舞う宮坂えりかだが、その顔には疲労の色が浮かんでいた。
宮坂を救出し、その足で班編成を引率の教師に報告をすることになった。
その班のリーダーは、なぜか担ぎ上げられた俺、
「ふむ。無事に同じ班になれたようだな」
報告を受けた
「そこに水を差すようで申し訳ないのだが──」
そこに居たのは、よく教室で見かける男子だ。
「
我がクラスのトップカーストの頂点に君臨する、容姿端麗、文武両道、品行方正な、完全なる「持っている側」の人間だ。
「
「よろしく頼むよ」
「やめておけ
なんで分かるんだ
『……ん? 呼んだかね昇太』
やべ、本物の
とりあえずばあちゃんには何か土産を買って謝るとしよう。
「──よし、決まりだな」
ぱんっ、と柏手を打つ音で我に返った時には、すでに話は終わっていた。
俺たちの班に割り当てられた炊事場は、水場から一番遠い場所だった。
俺の両手には、水が入ったポリタンクが二つ。
それを日常でしているように
市川は持参した器具と
宮坂と赤堀の女子たちには、食材など軽い荷物を持ってもらっている。
「ありがとう、助かったよ」
話しかけてきたのは、カレー用の大きな鍋を抱えたトップカーストのリーダー格、
「……いつもの連中はどうした」
顔を向けずに、届くかどうかの声量で呟く。
「今回は俺一人で参加なんだ」
「取り巻きはいいのかよ」
「実はそれもあってね、一人で参加したんだ」
「ほーん」
「要するに、逃げ、だよ」
爽やかに逃げを宣言する
まあ、何だっていい。
同じ班になったからには、キリキリ働けよ。
炊事場の横に荷物を置き、作業の分担を決める。
が、普段ならリーダーシップを発揮する
あらやだこいつ、男子相手の寝技の達人かしら。
「このグループは
「そうだね、市川くんもこう言ってる事だし、遠慮なく割り振ってくれ」
「あ、あたしは、ショタっちと一緒がいいかな、なんて……」
市川と
宮坂はといえば、絡まれた疲れが残っているのだろうか、先程からやけに無口だ。
しかし、なんだこの無理ゲー。
このパーティのリーダーが俺って、ないわー。
いや待て、こういう時はとりあえず戦力分析からだな。ネトゲで一狩り行く前にもやる、重要なブリーフィングだ。
「じゃあ聞く。飯ごうでゴハン炊ける奴」
手を挙げたのは、市川と俺。
「
「恥ずかしいけど、カップラーメンくらいしか」
ほーん、さすがリア充。
何でも出来るような顔して、こんなところでもギャップ萌えを狙いますか。
だが残念だな。萌えたのは俺だけだ。嘘だ。
「赤堀は?」
「んー、ひと通り出来るけど」
何か引っかかる言い方だが、宮坂がいれば大丈夫だろう。
その信頼と実績の宮坂は、聞くまでもなく料理が超上手い。ただ、少し疲れているように見えるのが気掛かりだけど。
「よし決まり。市川と俺はカマド作りと飯ごう、
ぶーぶー文句を言う赤堀を宮坂に頼んで、それぞれの作業に取り掛かった。
備え付けのコンクリブロックを使って、市川と二人でカマドを組み上げていく。
「手際いいな、市川」
「これでもボーイスカウトやってたからね。てか、
すげえ市川。
顔はいいし明るいし、腕っ節も強い。
そろそろ万能説が出てくるぞ。
まあ、俺は趣味でやってる程度だから到底本職の市川には敵わないが、それでも順調に石を積み上げていく。
あっという間に設営された二つのカマドを前に、市川に暇を出す。実際に作業が多いのは、カレー作り。
市川には休憩がてらそっちに行ってもらう。
さて。
家庭では炊飯器がやってくれることを、自分でやるのが飯ごう
といっても、実は難しい事はない。うまく炊くには知識と技術を要するけれど、素人の場合は失敗しないことの方が大事。
「なあ
「ああ、何度かやったことあるし、さっき助けてもらったからな。恩は早めに返したい」
黙々と作業を続ける俺の背中に、市川と赤堀が立つ。
「気にしなくていいのに、ねぇ」
「まったくだ、義理堅いっていうのか、融通が利かないっていうのか」
「「だが、それが良い」」
んだよ、仲良いな幼馴染カップル。
つか
てか赤堀も外神も、宮坂をフォローしろ。
ちょっと浮かない顔しちゃってるじゃないか。
談笑する市川たちを尻目に、早速準備に取り掛かる。
正直、時間はギリギリなのだ。
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