第9話 ねこっちと電話②

 ねこっちは電話に出ることを覚えました。

 でも、最近は誰からも電話がかかってきません。留守番中のねこっちは、ちょっと退屈です。そんな時、ねこっちは思い出したのです。くんちゃんが、電話の何かのボタンを押して話しをしていたことを。


 ねこっちは早速試してみることにしました。

 まずは、いつもの要領で子機を倒します。すると「プー」って音が聞こえていました。

 くんちゃんはどのボタンを押していたんだっけ……

 ねこっちは思い出しながらボタンを押してみました。そしたらさっきまで「プー」だった音が、「プップップ……プルルルプルルル」にかわったのです。

 ねこっちは慌てました。もしかしたら壊してしまったのかもしれません。くんちゃんに怒られてしまいます。どうしていいのかわからなくてオロオロしていた時でした。


『もしもーし』


 子機からりぃちゃんの声がしました。


「りぃちゃん! 助けて欲しいのです! ねこっちは電話を壊してしまったかもしれません!」


 一所懸命説明するけど、りぃちゃんには伝わらないようでした。


『あれ? ねこっち? くんちゃんは今仕事中でしょ?』

「そうです! くんちゃんは仕事中なので、ねこっちは電話をかけようとしたのですよ!」

『誰がかけたの? もしかして、ねこっちだったりして?』

「そうですよ! ねこっちがかけたんですよ! 電話が壊れたかもしれないのですよ!」

『すごいね! ねこっちは! 電話かけてくる猫なんて初めてだよー』


 ねこっちは、なぜか褒められました。

 でも、壊してしまったとしたらねこっちは怒られてしまうのです。くんちゃんに嫌われたくないのです。必死にりぃちゃんにそのことを話したけれど伝わりません。


『じゃあまたね! バイバーイ!』


 りいちゃんは電話を切ってしまいました。電話は「プープープー」と言う音がするだけです。ねこっちがしょんぼりしていると、くんちゃんが帰ってきました。

 ねこっちは正直にくんちゃんに謝ることにしました。


「くんちゃん、ごめんね。ねこっちは電話を壊してしまったのです」


 くんちゃんは、床に転がっている子機を見て手に取りました。そしていつもの子機を置くところにもどしてねこっちに言います。


「ねこっち、また電話出たの? 使ったら切るを覚えようね!」


「使ったら切る」がわからなくて、ねこっちが困っていると電話が鳴りました。

 くんちゃんが、電話に出ます。相手はりぃちゃんみたいです。


『あのさー昼間にねこっちから電話がかかってきたけど何かあったの?』

「え? ねこっちが電話に出たんじゃなくて、電話をかけてきたの?」

『うん。リダイアル覚えたんじゃないかな? かかってきたよ。』

「そっかーごめんね。時々かけるかもしれないけど暇だったら相手してあげてくれる?」


 そう言って、くんちゃんは電話を切るとねこっちと向かい合わせに座って言いました。


「ねこっち、リダイアル覚えたならやっぱり『切る』も覚えよう!」


 ねこっちは、留守番だけじゃなくて電話番も暇つぶしの電話も出来る猫になったのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る