人選ミスで勇者認定された俺は医者になる

色即ダルセーニョ

序章 全ての始まり

(この物語はフィクションであり、実在の人物とは関係がありません。また、性的描写が多くR18指定の表現が数多く使われております。)


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春の夜はまだ寒い。

季節の変わり目だと感じさせる程、昼間との温度差も激しい。夜と一重に言っても都心の夜とは、限りなく異なる。日中は人通りも多いこの街も、夜にはピタリと静かになる。普段の夜であれば、虫のさざめきが聞こえるほど静かのはずである。

 しかし、その日に限ってなぜか外から音が聞こえていた。普通に考えれば、分かる事なのだが、その事自体が常軌を逸していた。幸いな事に、夜の街を歩くような人は人っ子一人いなかった。

もし今夜に出掛けている人がいれば、いつもと違う街の異変に気付いたであろう。それはとても些細な変化でしかなかった。偶然に外の景色を眺めた者であろうと気付けない程であった。時間にして数秒の間、時が止まったのである。不可思議な現象が起こった後、空間が波打ったように感じられた。その瞬間、水面に波紋が広がるように、空間に伝わり、”何か”が音を立てて地面に崩れ落ちた。

「・・・・・・・・・うぅ〜、ここは・・ど・こ?」

音を立てながら地面に落ちたものは、年端もいかない女の子であった。彼女が辺りを見渡すと、辺りに広がるのは見たことのない景色と見たことのない植物。不規則に生い茂った植物と森らしき木々の数々を眺め、少女は激しい不安に駆られた。

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜」

少女から似つかわしくない音が、静かな夜に響き渡る。それは、少女の中の腹の虫の音である。ひどい空腹感に突然に襲われながら、少女は暖かい場所を探そうと歩き始める。しかし、思っていたよりも体が本調子ではないのか,すぐに歩くのをやめてしまった。そんな時、彼女を淡い光が包み込むように輝き出した。恐らく、彼女が何らかの”力”を発現させたのであろう。淡い光は、まるで昼間の太陽のような明るさを放っていたが、すぐに収まった。・・・・・つい先ほどまで少女がいた場所には何もなくなっていた。


新たな”来訪者”が来た日だとは誰も知るよしもなかった。


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