エピローグ

 私達がゲートに吹き飛ばれ、その先はアルムガムの門の前でした。

 その後ライリー陛下に事情を話し魔界へ、もちろんデール殿の中はデイルワッツであった事は伏せて……。


 巨大な城があった場所は瓦礫の山になっており、不眠不休で瓦礫の撤去を行い3日後にデール殿とデイルワッツの亡骸を発見、これで人間の勝利が決まり魔界との戦争は幕を閉じ、デール殿は名誉の戦死という伝説を残しました……。


 ですが私を含めダリル様、フェリシアはデール殿とエリンがまだ生きていると思っています。なぜならばデイルワッツの体には天使の剣……アブソーヘイズが刺さっておらず、いくら探しても発見できなかったからです。


 もしかしたら、そのうちあのへんてこな笑いをする勇者と明るい精霊にまた会えるかもしれません。

 そんな気がします。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「……へっ……へっくしょい!」


「ちょ! くしゃみするなら向こう向いてよ! 唾とんだ~!」


「ズズ、仕方あるまい勝手に出るものなんだから……でここはどこなのだ?」


「さぁ?」


「さぁって、お前がここに飛ばしたんだろうが」


「土壇場だったんだからしょうがないじゃん。魔力で体を作って、魂を移して、すぐゲートを開いて、そして飛び込んだんだから。飛んだ先なんて選んでられないよ」


「あの状況から助かった事には感謝はしているが……この体どうにかできんのか? エリンと同じ姿ではないか……」


「アタシの分身なんだからアタシの姿になっちゃうのは当たり前じゃん。だけどまったく同じでもないよ、髪の上は黒だし歯はギザギザだし、デールの魔力の影響ってすごいね~」


「そんなとこを褒められても嬉しくないぞ……しかしアナネットを吸収したエリンがアナネットの固有魔法を使えるようになるとはな。いや、その天使の姿に固有魔法の事を考えると『天使エリン』に戻ったから使えたと言うべきか」


「戻ったって言われてもアタシはアタシだよ、でもこの真っ赤な羽根は嫌だな~頭の赤い輪っかも邪魔だし~」


「我輩なんぞどっちも真っ黒なんだが……」


「それもデールの魔力の影響で変化しちゃったんだろうね。で、これからどうするの? みんなの所に戻る? 今度はちゃんとした場所にゲートを出せばいいし」


「……いや……今戻るのは……どうも……それにこの姿は――」


「ムカッ、アタシの姿に何の問題があるんだよ! ――ガブッ!!」


「いだだだ! 頭に噛み付くな!! それは違……くもないが、あの後にすぐ戻るのはどうかと言う事だ!」


「プハッ――ああ、デールってばあの時はかっこつけてたもんね。なのにすぐに生きて戻ってたら……うん、それはかっこ悪い……ん? でも違くもないって事も言ってたよね……て事はやっぱり――」


「待て! 落ち着け! さすがにこの堕天使の姿で戻るのはまずいだろって言いたかったんだ!」


「え? ベル、ダリ爺、フェリはわかってくれると思うけど?」


「我輩もそう思うが他の人間はそうもいかんだろ。あいつ等が庇ってくれるだろうが迷惑をかけたくない……かといって行く当てもないが……」


「……なるほど、確かに。まぁアタシはデールがどんな姿だろうが、どこ行こうが着いて行くよ。言ったでしょいつも一緒だって」


「はぁ……天使になってもお前は変わらんな」


「好きにしろって言ったのはデールじゃん」


「そうな、そうだった。――よし、まずは村か町を探してこの羽を隠す服の調達、そして腹ごしらえだ、腹が減っては考えがまとまらんからな、食ってから後の事を考える! そうと決まれば行くぞ、エリン!」


「了解、マスター!」


「チョハ! 新しい旅へ!!」

「にひっ! 新しい旅へ!!」


 新しい我輩、終わります。





 新しい我輩、はじめます。 ――完――

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