第9話 『今は貴様を討つ! ただそれだけだ!!』

「――というわけだ、わかったか二人とも」


『大体わかったけど……そんなことして大丈夫なの?』


「……私もそれは無茶だと思うのです」


 まぁ我輩自身でもかなりの無謀だとは思うが。


「……かといって他に手段が思いつかんからな。では爺さん達と交代してくるから二人が戻ったら先ほどの作戦を説明をしといてくれ」


『了解』


「はいです」


 さて……今度こそこの戦いを終わらせるからなアナネット。



「ぐぅ……くそ……なんて強さなんじゃ……2人でもこの様か……」


「はぁ……はぁ……あの黄金の剣を折るくらいしか出来ないとは……」


「ふん、人間にしてはよく頑張った方だが私の敵ではないな」


 まずい、爺さん達が押されてい……って黄金の剣が根元から折れているではないか!


「おいこら! アナネット! 黄金の剣になんて事をしてくれたんだ!」


 あれではもう何の価値もないではないか。


「チッ、うるさいのが壁から出てきたか。……そういえばこの悪趣味な剣は貴様のお気に入りだったな……ならこれからは大切に保存しておくんだな」


 あいつ雑に剣を投げ捨てやがった! くぉのおおおおお!!


「デール様……落ち着いてくださいです。それじゃ作戦もうまくいかないです」


「あ、ああ……そうだな。すまん」


 我輩とした事が剣如きに……如きに……うう……やっぱり悲しいものは悲しい……。


「……はぁ……ベルトラ! 爺さん! 交代だ。フェリシアの所まで下がってくれ」


「あいよ」


「わかりました」


「ふん! そんな事させると――」


 普通はさせないよな、だが。


「――我輩がさせるのさ! ファイアボール!」


「――チィ!」


 避けながらまた落ちてた装飾の剣を拾ったか。どうやら我輩の考えは合っていそうだが……ここはカマをかけてみるか。


「アナネット、その体になってから固有魔法を一切使わなくなったな? どうしてだ?」


「っ!?」


 顔色が変わった……顔が隠れているが我輩にはわかる。


「他の魔法が使えないからか? それは違うな、普通の魔法すら使っていないものな」


「……それがどうかしたか? あんな人間共に魔法を使うまでもないだけだ」


 最初に散々使っといていまさらそれを言うか。


「そもそも貴様をここまで吹き飛ばしたのは魔法ではないか」


「確かにそうだな。だがその魔法を使った瞬間わかったんだろ? 自分の体は魔力で構築されている、だから魔力を消費する魔法を使うと体の維持が出来なくなる……そうなるとより魔力の消費が激しい固有魔法は使えない、とな」


「…………」


 チョハッ、やはり図星のようだな。


「……沈黙は肯定と同じだぞ」


「クス、まさか同じ台詞をまた聞くとはな……」


 同じ台詞? 我輩はじめていったと思うのだが……まぁいい。


「分身も出せぬ、魔法も使えぬ、そんな貴様に我輩を相手にできるのか? 降参するなら今のうちだぞ」


「ふん、降参だと? 何を馬鹿なことを。確かに貴様の言う通りだとしても何の問題もない……魔法関係を使わなくとも私にはこの剣技がある。脅威なのはアブソーヘイズの魔力吸収だが今は使い物にならん、仮にそんな事が出来ても【私】を操り阻止すればいいだけの事」


 アブソーヘイズの魔力吸収はやはり警戒しておったか。


「それに多少くらいなら魔法を使っても問題はないからな……ブラックスモーク!」


 ここで煙幕だと、しまったこれは予想外だ。

 だがアナネットがやったように吹き飛ばせば――。


「――馬鹿が! 余裕をかましすぎて懐ががら空きなんだよ、死ね!!」


 ちっ今ので一気に距離を積めて来たのか!


「ぐっ!」


 いてぇ! くそっまた腹を刺された……だが――。


「……チョハ、少し予定が狂ったが……まぁよい」


「何!?」


 元々隙を見せて懐にもぐりこませるはずが……まさか先手必勝で来られるとは。


「フンス!」


「なっ!?」


「よし、捕まえたぞ……」


 アナネットを抱え込んだこの左腕は絶対に離さんからな。


「この放せ! この! 何をする気だ!? この変態! 私はお前みたいな悪魔は好かんから離れろ!」


「断る、この手は死んでも放さん……って変態とは何だ変態とは! それに我輩も好き好んでこんな事をしておらぬわ、貴様を倒すためしょうがなくやっている事だ! ――来い!」


 しかしまたこの固有魔法が役に立つなんてな。


「来い? 一斉攻撃でもする気な……またアブソーヘイズを手にしただと?」


 そうそう、我輩の思っていた選ばれし者がこの様に来い! と言うと剣が飛んで手元に来るもんだ……まぁこれは自力とも言うが……。


「クス、馬鹿ね。アブソーヘイズは使えないって言ったのに聞いていなかったの?」


「いいや! これで完全に貴様は終わりだ!! うりゃああああああああ!! ――グフッ!」


「――ガハッ!? ……馬鹿な私事……自分も刺した……だと……!?」


 自分で自分を刺す何てどうかしてるぞ……が、これしかこいつを倒す手段はないからしょうがない。


「今だ、エリン! マスターを我輩にし、魔力を吸い尽くせ!!」


『了解!』


「何!? うがぁああああああああああ! い、いつの間に……【私】を……正常に……いや……それよりも……このままでは……まずい! 早く【私】を……え? 操れない……だと? 何故だ……!?」


 チョッハハハ、慌てておるな。


「ああ……そうだ。なんせ……我輩の魔力も……吸収させて……貴様の魔力を……歪ませている……からな……」


「……そうか……それで……自分ごと……刺した……のか!! ……狂っている! 自分も……死ぬ気か!?」


 狂っている……か。


「――かもな! だがそれがどうした? 今は貴様を討つ! ただそれだけだ!!」


「ぎゃあああああああああ……かっ体が……私の……体が……消えて……いく……」


「……アナネット……今まで……世話になった……礼を言うぞ……」


「……ふん……悪魔の……感謝なんて……いらないわよ……でも……ただでは……死なん……貴様等も……道連れ……だ! ファイアボール!」


 おいおい、往生際が悪い。一体どこに撃って……あれは大柱? まずい、あれを壊されると城が崩れる!


「くそがっ……エアーショット!」


 ちっ少ししか軌道をずらせなかった……大柱の半分は吹き飛ばされた。

 このままではまずい、時期に城が崩れてしまうぞ。


「……最後の……最後で……狙いを……ずらされ……たか……だが……それでも……十分だ……じゃあ……な……先に……地獄で……待って……てやるよ……クキャキャ……」


 アナネットが光の粒になって消えた……。

 周りに分身は……いない。これで終わったんだな……本当に。

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