第5話 『なるほど! それはわかりやすいね』
酒場の時みたいにならぬ様に身分を隠せばすんなり泊まれたな。
あ~疲れた……今日はもう一歩も動きたく――。
「それでは、聞き込みと行きましょうか」
ないのにこのネコ騎士ときたら何故すぐ行動に移しやがるのか。
「……」
「どうかしましたか?」
「我輩、今日は疲れたからこれ以上動きたくない!! もう断固として動かんぞ!」
「な!? 何そんなわがまま言っているんですか!?」
何を言われようが我輩の決意は固いのだ! 無視だ無視!
「これは駄目じゃな、テコでも動きそうにないの。仕方ないベルトラ、わしらで行こう」
「――――ぐぬぬ!! わかりました……行きましょう……エリン、フェリシア留守番をお願いね」
「りょうか~い」
「あ、はい」
「がんばってこいよ~」
「――――!!」
――バゴン!!
なっなんだ!? 地震か!?
「あ、あの……ド、ドアが曲がっちゃってるんですけど……」
ドアを閉めるのならもっと静かにせぬか、まったく。
※
「戻りました、フレイザーについて宿の方に色々と聞いてきましたよ」
「うむ、ご苦労」
「………………何よ偉そうに、仕方なく行っただけなのに……はぁ……もいいや。……まずこれを見てください」
何だ? ベルトラが紙を広げだしたが。
「これは……バルガス周辺の地図か」
「はい、赤い丸がこの村で、そしてこのバツ印がフレイザーの居場所です。バルガスを崩壊させた後このバツ印にある洞窟に1度も外に出ず引きこもっているそうです」
「は?? それは本当なのか?」
1度も外に出ずに洞窟の中に引きこもっているなんてどう考えてもおかしいぞ。
「そうみたいじゃ、村人が交代で見張っているらしくての1度も出てきた事はなかったそうだ。逆に中に入る者もいなかったと」
「う~ん? でもさ~ゲートで移動してる可能性もあるんじゃないの? それだったらもう中にいないんじゃ……」
え!? エリンがまともな質問をしただと!? 明日は雨、いや嵐かもしれん。
「それもないみたい、火の髪だから洞窟が照らされてて姿が見えるんだって」
「なるほど! それはわかりやすいね」
……フレイザーよ、お前いったい何をしておるのだ? 間抜けにもほどがあるではないか。
そもそもだ、バルガスをマグマで味方ごと派手に滅ぼし、自慢の火の髪のせいで洞窟に隠れてるのがバレバレ。我輩の知っているフレイザーとまったく違うのだがどうなっておるのだ?
まぁどうせ必ず戦うはめになるのだからその時にわかるか。
「……でだ、丸見えのフレイザー相手にどう戦うのだ?」
「はい、それですが……このエヴンラルで水の刃を作ります、父様がそれでフレイザーと戦ったそうです」
火には水か、単純だがそれが一番いい戦法ではあるな。
「ですが、フレイザーの火力とエヴンラルの水の刃では相殺が続き、最後は水が切れてしまった父様が……」
「なるほど、無限と有限の差が出たわけだな」
「はい……」
しかしそれだと――。
「じゃあどうするの? それだと結局ベルのお父さんと同じ事になっちゃうじゃん」
そう、そこの問題にぶち当たるよな。
「ん~、じゃあとにかく水をいっぱいもっていけばいいじゃん」
「……その水をどうやってそれを運ぶ気なのだ」
「フレイザーって引きこんだまま動かないんでしょ? だったらその間に水を入れたタルをたっくさんたっくさん! それこを100個くらい並べとけばいいじゃん!」
エリンの頭の悪いとこが出てきた、そんなもの普通に考えれば不可能だろうが。
「それもありかもしれんが……」
いや! ないだろ! 爺さんもボケだしたか!?
「今は動いてなくても、そんな動きをすれば洞窟から出てきて攻撃を受けると思うがの……そもそもタルを100個をどうやって揃えるんじゃ? 見た限りこの村の全てを集めても100個は届かないと思うがの」
それ以前にタルを100個も戦場に置けば戦えないと思うのだが!?
「あ、そっか~いいアイディアだと思ったんだけどな~」
夢物語と現実をいっしょにするなよ……。
「あ! じゃあさ! フェリの植物で水を作り出すとか!」
お、それはまだ現実味があるではないか。
「あ、それは無理です」
即答!?
「え? どうして!?」
「水を貯める能力を持った植物はありますからそこは問題ないですが、ただ自分で水を作るのではなく空気中や地面から水分を吸収して貯めますのです、なので貯蓄量の限度もありますです……」
「結局はタル同様、数が多くなるという事か」
利点があるとすればタルを集めなくていいのとその中に水を入れる手間がない、くらいか?
どっちにしろ邪魔になるだけだな。
「です……すみませんです、お役に立てなくて」
「ダメか~……ん~……お? これって池じゃないの? そうじゃん! ここにフレイザーを誘い込めばいいんじゃない?」
どれどれ? ふむ、確かに洞窟から近い場所に池らしきものがあるな。
「他の案が現状思いつかんし、その池に行ってみるかの?」
「そうですね。明日、朝一で下見に行ってみましょうか」
ええ……何故朝一なのだ? 勘弁してほしい、ゆっくり寝たかったのだが……。
※
「デール殿! 早く登ってください!」
「ぜぇ……ぜぇ……ちょ、ちょっと待て……」
地図ではわからなかったが、まさかこんな急勾配の山の上にあるだなんて……しかも他の山とは違い人によって手を加えられた道もない、道があるとすれば獣道くらい……そんな中を転げ落ちないように登るなんてあまりにも重労働だ。
だから日も昇らぬ朝の内に出発したのか、地図を読めるようにとベルトラに言われておったが面倒くさくてサボってたのがここに来て仇となるとはな。よっこいしょっ!
「あっ! デール様そのツタの先はもう切れて――」
「え? ――なっ!? 体の、バランスが! おっおち――」
あ……我輩、死んだ……我輩の旅もここで終わりを迎えるか。
「デール様!!」
フェリシアから何か飛び出してきた……あれは何かのツタ、か!?
「ぐえ!!」
くっ首に巻きついて……いっ息が!!
「――ぜぇぜぇ……あっ危なかった……です」
フェリシアの助けがなければ確実に死んでいたかもしれんが――。
「フェリ! デールの首が絞まっちゃってる!!」
こっこれはこれで――死……ぬ。
「え? あっ!!」
「げほ! げほ!」
「すっすみません! 無我夢中で……」
「いっいや、命があっただけ、マシというものだ、助かったぞ」
……一瞬花畑が見えたがな。
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