第2話 『ダッダイジョウブデスヨ』
結局また我輩がフェリシアを背負う事になってしまった、まったく何故こんなハメに……。
まぁまだ山小屋が近くで助かったと言うべきか。
「ほら、着いたぞ――って何だ、この山小屋は!? まるで蒸し風呂みたいじゃないか!」
これではまだ外の方がマシではないか。
「うわ~……これはひどいのぉ休むにも休めんぞ、これは……」
全ての窓を空けてもこう外も暑いのでは無駄だろうし、何かいい方法はないものか。
「……そうだ、氷魔法があるではないか。それで冷やせば――」
「いえ、それは無理ですね」
「は!? 何故だ!? 威力に問題があれば別に抑えればいいだけではないか」
「威力を落としてはこの暑さではすぐに溶けます、焼け石に水という奴ですね」
「では常に――」
「かといって常に撃ち続けては魔力を大きく消費する。そもそもそんな事が出来ればマレリスの時にとっくにやってますよ」
うぐ……確かに。
「ちなみに風魔法も同様です、むしろ熱風を飛ばす分余計暑いかと」
お手上げという事か……ん? 待てよ。
「なぁフェリシア」
「は……はい……なん……です?」
「フェリシアの家はほとんど暑くなく快適だったよな? あれは何故だ?」
あの時は暑さとか魔女とか色んな感情がせめぎあっておったからな、今更すぎるが冷静に考えればこの小屋までとはいかなくても暑かったはずだ。
「そういえばそうですね……周りに影がある場所でもありませんでしたし」
「そ、それは……この……植物を……家の……隙間に……」
フェリシアからまた見たこともない植物が生えてきた、が……これはどう見ても……。
「……我輩にはその辺に生えている雑草にしか見えんのだが」
「これは……ただの……雑草では……ないです……えと……植物というのは……太陽の光で合成を……行います……ですが、光は……熱も持っています……です。これは……光ではなく熱を……利用して……合成を……しますです……。なので……」
「うむ、よくわからん」
「同じくわかんない」
「ワシもさっぱり」
「すみません、フェリシアさん。私も何を仰ってるのか……」
「……………………………………熱を……吸収してくれる……植物です、以上……です」
「「「「なるほど」」」」
「では、とりあえずこの雑草をあちこちに貼り付ければいいのだな」
「だから……雑草……では……いえ……もう……それで……いいです。皆様、これを……壁に……貼り付け……お願い……します……です」
※
「ふぅ……だいぶ涼しくなってきたな」
その代わり小屋の中に草を付けまくったせいでかなり青臭い……しかもエリンの奴調子に乗って窓まで貼り付けたものだからかなり暗いし……まぁ暑いよりはましか。
「そうだね~もうここから動きたくない~外に出たくない~」
お前はアブソーヘイズにずっと入っておったのに何を言うか!!
「あの、デール様、これをどうぞです」
「ん? フェリシア、もういいのか?」
「はい、少し休んで薬を飲みましたので大丈夫です」
その薬ってアレじゃなかろうか……いや、爺さんと違ってフェリシアは取り扱いには慣れておるだろうし心配は要らぬか。
「そうか、でこれは?」
物凄い濃い緑色した液体が目の前に……もう見た目からすごく苦そうなのだが。
「これは体を冷やす効果のある植物を煎じた物です、体がひんやりしますですよ。あ、もちろん苦くないように甘い果汁が入ってますです。エリン様、ベルトラ様、ダリル様もどうぞです」
本当に苦くないのか? 我輩苦いのはどうも……そうだ、皆が飲んだのを見てからにしよう。
「どれどれ~ゴクゴク……プハッ! 確かに甘い! そして本当に体がひんやりしてきたよ! すごいごい!」
「ズズ~……ふむ、こんなものもあるんじゃなぁ」
「コクン……確かに冷えますね」
よし大丈夫そうだな、では我輩も……おお、確かに苦くないし体が冷える感じだ。
「あれ? この山登りといい砂漠の時といいこれを飲めばもっと楽だったんじゃないのこれ?」
あ……確かに、エリンの奴たまに鋭いとこ突くな。
「えと、それは品種改良で今作り出した物なんです。もっと早く思いついて作ればよかったですね、すみませんです」
え!? 今作り出した物だと!?
「なぁフェリシアよ、気になっておったのだが」
「なんです? あ、私何かおかしたことしちゃいまたですか?」
「いや、そうではない、むしろ助かっているくらいだ。我輩が気になったのはフェリシアの調合や多少の医学の知識、そして品種改良すらできる植物の知識の事だ」
「あう……その事ですか……」
む? 目をそらした?そんなに話せない事なのか?
「答えたくなければそれでも良いが」
「……いえ、これは皆様に話しておくべき事でしたです。調合や知識の方は母からです、母は元は王宮直属の魔術師兼薬師です。植物は父からです、父も元は王宮直属の植物研究家です。どちらも私がこの体になるまでは……ですが」
「ああ、それでオアシスにあのような結界が張れたのか、しかしなぜマレリスは植物の研究を?」
王宮直属となれば植物に相当力を注いでいるという事だが。
「そうでした、デール殿はマレリスの中に入れなかったですものね。あの門番さえ居なければ……今思い出しただけでも……フシャー!!」
ネコ騎士の髪の毛が逆立ってる。
「……思い出し怒りのとこすまんが話を戻してくれ」
「フシャー!! ……ハッ、すみません。え~と……マレリスは砂漠が深刻で植物系を栽培するのは難しかったのです。それで各国からあらゆる植物を買っていたんです、なので町の中は色んな植物に溢れてたんですよ」
ふむ、なるほど。
「はい、そして国策として品種改良といった植物研究も盛んだったのです。それで国から出る時に父がそういった資料を持ち出しまして、それを私が……」
「……国策として作った資料を持ち出してよかったのか?」
「……………………………………………………ダッダイジョウブデスヨ、アハハハ」
その長い間に言葉も変、そして頭の花がすごい動いて物凄いわかりやすい動揺っぷり。もはや完全にアウトではないか……ハッ!! そうか、だからさっき目をそらしたのか!!
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