第8話 『貴様の魔力! 我輩が貰い受ける!!』

『な、何あれ……』


「奴の奥の手……オリハルコン並の強度の石を全身にまとい、周りを沼のように変え相手を沈めるのだ、欠点としてはこういった広い場所だと沼の効果が薄い事と全身に石をまとったせいで自由に動けない事だが……」


「強度な石で身の安全を確保し、周りの地面が沼のように沈むため近づけず……欠点はあるもののやっかいですね」


 だからといってこうして見ているだけともいかんよな。


「なぁベルトラ、貴様の全魔力を斬硬刀に送ればオリハルコンを斬れるか?」


「オリハルコンですか……そんな物を斬った事ないのでわかりませが、私の全魔力ではたぶん無理でしょう。ただ……お爺様、剣豪エドガーはこの斬硬刀でオリハルコン級の甲殻を持った魔獣を真っ二つに斬ったという話は聞いた事はありますが……」


 うーむ、確信はないが斬硬刀で石の鎧をうちやぶれる可能性があるという訳か。

 しかしベルトラの魔力では無理となると……。


「ふむ、エリン確認したい事があるのだが」


『ん? な~に~?』



《ぜぇぜぇ、くそ! あの野郎共、よくも、やりやがったな……この状態になる、のは屈辱だが、背に腹は代えられ、ない……場所が、広くて奴らを、飲み込めなかったが、まぁいい、じっくりと……ああ?》


「勇者殿! 本当にこんな事うまくいのじゃろうな!?」


《なんだ? ……ジジイが増えて、走ってこっちに、向かってきてる? ……気でも狂ったか? グヘへへへ! ……自分から、底なし沼に、踏み込むとは、馬鹿め!》


「知るか! やってみなければわからん!」


「やってみなければじゃと!? おい!!」


 やった事がないものをどうわかれというのだ。

 だが、やるしかないんだ……もうこれしか思いつかんからな。


「ダリル様、一応さっきの作戦も成功しましたし……大丈夫でしょう……タブン……」


「いやいやいや! 奇襲は失敗に終わったじゃろが! それにタブンってなんじゃ!? タブンって! ……くぅ~! 年寄りを一番危険な目に合わせよってからに! いいか、失敗するなよ! 絶対失敗なんぞするなよ!? ――行くぞぉおお! しっかり掴まれっとれえええええ! どりゃぁああああああああああああ!!」


 うお!? 我輩とベルトラを担いでいる状態なのにすごいジャンプ力だ、爺さんの怪力っぷりはやはり魔力による身体強化しておるのか、あれ? でもそれだと……いや、今はフィゲロアを倒す事を考えるんだ、奴は目の前にいるのだからな。


《な!? あのジジイ、俺様のとこ、までジャンプ、しただと!?》


 よし、着地位置はばっちり! ……爺さんが腰ぐらいまで一気に埋まってしまったが。


「――まぁ問題あるまい」


「あるわい!!」


 おっと、心の声が漏れてしまっていたか。


「ぬおおおお! 沈む! ベルトラ早くしてくれ!」


「わかってます。すぅ~……はあぁっ!」


《はっ、その剣で、この石の鎧を斬ろう、てか? ……無駄だ! さっきの、戦いで、この強度なら、斬れないのはわかってるからな。……そのまま石の沼っに沈むがいいわ!》


 確かにベルトラだけの魔力では無理だろうな。


「しかし、これならどうだ!!」


 ベルトラが剣を握っている腕全般、そして鎧のある部分はダメだ。


「歯食いしばれ、ベルトラ! いくぞ!」


 となるとここしかないよな。


「どんとこいです!」


 アブソーヘイズをベルトラのふとももに刺す!


「ふん!」


「ぐっ!」


《なっ!? こいつ自分の仲間を、刺しただと!?》


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「エリン確認したい事があるのだが」


『ん? な~に~?』


「我輩に送っている魔力、それを他人に流す事は可能なのか?」


『うん、いけるよ~。だけど魔力を吸収するのと一緒でアブソーヘイズを刺さないといけないけど』


 やはり吸収だけではなく他者に送り込む能力もこいつにあったか。


「だったらベルトラに魔力を送れば斬硬刀で斬れるのではないか? 2人はそのあたりどう思う?」


「魔力の底上げですか……それこそやってみないとわかりませんが……」


『アタシもそれはわかんない、斬れる位の魔力が足りるといいけど……』


 成功は五分五分といったところか。


「しかしあの足場はどうするのですか? あんな沼じゃたどり着く前に沈みますし、仮にたどり着いても足場が不安定すぎてとても斬るには……」


「そこは考えてある。足場の為にはまずは一人で戦ってる爺さんの援護を――って……え!?」


 フィゲロアと戦ってる間に何十匹の下級悪魔をたった一人で壊滅させて休んでる!?


「ふぅ~……ん? なんじゃ? 人が一休みしてる時に」


 ……まぁいい、援護の手間が省けた。


「足場……って……デ、デール殿……まっまさか、ダリル様を!?」


「そのまさかだ、チョッハハ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『ベル! 一気に魔力流すとベルへの体の負担が大きくなると思うから頑張って耐えてね!』


「承知!」


「たったのむ! はっはやくしてくれ!! どんどん沈んでるううう!!」


「『はぁああああああ!!』」


 いけ! 石の鎧をぶった斬るのだ!!


《な、何だ!? この魔力は!?》


「お願い! 斬れて!! ……お爺様! 私に力をお貸しください!!」


《っ!? ま、まさか――》


 やった! 刀身が石に入りはじめた!


《そっそんな馬鹿な!? おっ俺様の赤石の鎧が、斬られる!?》


「『うおおおおおおおおおおお!!』」


《なんだとおおおおおおおおおおおお!?》


 よし!! 石の鎧が斬れてフィゲロアの素肌が見えた!


「馬鹿な! 馬鹿な! 俺様の石の鎧がそんな剣如きに!!」


「悪いがフィゲロア、貴様の魔力! 我輩が貰い受ける!!」


「ぐふっ! おおおおおおおおおおお!? まっ魔力がっ吸われっ!? ……くそっ……ここまで……なのか……デイル……ワッツ……様……申し訳……ありま……せ……」


 フィゲロアが倒れたと同時に周りの赤い石が元の色に戻っていく、魔力が消えたという事だな。

 つまり――。


『はぁはぁ……倒したの?』


「はぁはぁ……どうやら……そのようです」


「……じゃったら2人とも……いい加減降りてくれないかの、もう支えるのも限界なんじゃが……」


 我輩に忠誠を誓った悪魔……。


「悪魔四天王の一人、「赤石せきせきのフィゲロア」の最後……だな」

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