俺にとって美味しいものと言ったら、姉がたまに作ってくれる料理だった。

 両親はネグレクトというやつで、俺達姉弟の世話を全くしなかった。だから親代わりとして、姉が全てをしてくれた。

 そのせいで、今大変なことになっている。

 姉が死んでから、俺は抜け殻のようになった。

 姉を中心に世界は回っていたのだと、失ってから気づいた。


 しかしこれも、姉の思いどおりらしい。

 彼女が死んでから遺品整理をしている時に、一通の手紙を見つけた。

 中にはたった一行。

『早くお姉ちゃんのところにおいで』

 それだけで充分だった。

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