甘い甘い誘惑

 甘いものは、食べ過ぎてはいけないよ。

 お父さんはそう言って笑った。


 僕には、生まれた時からお母さんがいない。

 それが当たり前だから、特にさみしくなんかない。

 お父さんと二人でいれば、怖いものなんかなかった。


 でも、僕はそれを壊してしまった。

 甘いものは美味しい。

 だから、お父さんがいない時に、こっそり全部食べてしまった。


「何をやっているんだ!」


 今まで見たこと無い位、怒った顔。

 とんでもないことをしてしまったのだと、すぐに分かった。


 僕達は、もう死ぬしかないらしい。

 甘いものはもう無い。

 僕が全部食べてしまったから。

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