テスト
「はい、それじゃあテストを始める」
先生の一声に、場が一気に緊張した。
私のクラスの先生は、全く人気のない人だった。
面白いわけでもないし、みんなと仲がいいわけでもない。
ただ、いるだけの存在。
みんなの評価は、そんな感じだ。
それが悪いわけではないけど、担任の先生になるには力不足だった。
だから先生に対して、私達は当たり障りなく接していた。
それが悪かったのだろうか。
ある日、教室に入ってきた先生はとんでもないことを言い出した。
「今から、テストを受けてもらいます。その結果が合格だったら家に帰ることが出来、不合格だった場合はこの場で死んでもらいます」
「は、はあっ!?」
先生の言ったことが信じられなくて、クラスのリーダー的存在の人が叫ぶ。
それでも先生は涼しい顔で、用紙を配り始めた。
「ここを出るには、テストに合格する以外ありません。私をどうにかしたところで、一生出られなくなるだけですので、無駄なことはしないように」
本当のことを言っている。
その雰囲気から、私達は察してしまった。
だから誰も歯向かうことなく、大人しく用紙を回す。
回された紙は、両端がとじられた冊子だった。
まるで本当に、いつもやっているテストを受けるみたいだ。
私はそれを何だか信じられない気持ちで、受け取った。
そして先生の開始の合図があり、一斉に冊子を破いたのだけれど。
「何……これ?」
驚きが、その場に広がった。
何故かテストの内容は、先生についてのものばかり。
身長体重、出身地、好きな食べ物まで。
先生に関するものしかない。
こんなの分かるわけがない。
先生に対して無関心でいたから、そんな情報を知っている人は、このクラスにいないはずだ。
その瞬間、察してしまった。
先生は、誰も教室から出す気は無い。
これは時間をかけて行われる、先生の無理心中なんだ。
私は力を込めて握っていた、シャーペンを床に落としてしまう。
それが落ちた音が、とても大きく響いて聞こえた。
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