クラスのお調子者

 その子は面白いから、とても人気があった。

 授業中や休み時間でも、隙を見たらふざけたことをしてくる。

 それが面白くて、みんな次に彼が何をしてくれるのかと期待していた。


 彼も期待に応え、色々なことをしてくれた。

 どんどんエスカレートしていっても、誰もが麻痺をしていて、止めることはなかった。




 そしてついに、それは起こるべくして起こってしまう。


『みんなー、俺を見てくれー! 屋上にいるからー!』


 授業の時間中、何の前触れもなくその放送は流れてきた。

 真面目に授業をしていた先生、眠気と戦いながら受けていた生徒も、何事かと窓に集まり屋上を見る。


 放送にあった屋上には、彼がポツンと立っていた。

 誰かに背中を押されれば、真っ逆さまに落ちてしまうような場所にいた。

 放送室から屋上までは、随分距離があるから録音したものをタイマーで流したのだろう。


 彼は学年問わず名が知れ渡っていたから、みんなが今度は何をしでかしたのかと注目した。

 屋上が良く見える場所にいた生徒は、彼が笑っているのが分かった。

 誰もが見守る中、彼は叫んだ。


「みんなにー! 今から、面白いものを見せるー! ちゃんと見ててくれよなー!」


 そして、その勢いのまま屋上から飛び降りた。



 少しの間の後、重いものが落ちる音が響く。

 しかし、誰もしばらく動かなかった。


 衝撃を受けているとか、信じられないからではない。

 彼の悪ふざけが、まだ続くのだと思っていたのだ。


 だから、もしかしたら助かったのかもしれない命は失われた。



 それから長い月日が経った今でも、当事者はみんな口をそろえて言う。


「もっと何かが起こると思っていたから、とても残念だ。彼には、少し期待しすぎていた」


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