第197話【終わりの始まり】

スクラッチは自身の邸宅で過ごしていた。


「・・・・・」


自身の身の振り方について考えていたが、 左程深刻には考えていなかった。

自分はフォースタスとまともにやり合っても勝てる自信がある。

だがしかしファウストの心臓から溢れた血液で強化された兵達が邪魔だ。

兵の数は戦いで勝手に減っていくのだから反乱を起こすならば当て馬にぶつけて

兵の数を少なくすればいい。

だがしかし勝った所で王位の簒奪に見られてしまう。

それは名誉とは真逆である、 王位なんて放っておけば良いかもしれないが

かと言って王位を放棄するのは無責任の誹りを免れない。

それは後世の不名誉である、 それも駄目だ。


結論としては誰かに王位を継いで貰うのがベスト。

しかしフォンは行方不明、 ヘレンも死亡、 他の王位継承者も首都には居ない。

手詰まりである、 都合良くフォン辺りが見つかれば彼を取っ捕まえて

今の内に新政権を立ち上げるのだがそう上手くは事は運ばない。

このまま座視するのも高確率でフォースタスが国を滅ぼしてしまいそうな勢いだ。

もしも今のフォースタスが政をすれば確実にディストピアになるだろう。

ディストピアの英雄なんて笑い話にもならない。

そんな物名誉でも何でもない。

しかしそのディストピアを打倒すればまさに英雄・・・

だがしかし兵の補充をされてしまうのではないか?

思考が堂々巡りになる。


「陸軍のクーデターの時に俺も出れば良かったかなぁ」


フォンを捕まえて手駒に出来たかもしれないのに・・・


「まぁそんな腹芸は苦手だししょうがないか・・・ん?」


門が破られた、 如何やら何者がか侵入してきたようだ。

スクラッチは槍を持って侵入者の元へ向かった。


「おおっと? これはこれはフォン殿下ではありませんかぁ」


フォンとウェブスター、 数名の兵士がスクラッチの前に現れた。

待望の人物だが、 待っていたとは悟られてはいけない。


「一体如何言う用件ですかな? 私を暗殺にでも来ましたかな?」

「スクラッチ・・・俺と一緒に父を・・・フォースタスを討たないか?」

「・・・・・・・」


スクラッチは内心ほくそ笑むと同時に

ウェブスターの策の精度は恐ろしく高いなと戦慄した。


「ほぅ・・・それはそれは・・・私に如何言うメリットが有るのですかな?」

「国を救った英雄になれる」

「それは魅力的ですな

ならばすぐにでも声明を出して貰いますが宜しいですかな?」


ここに来てスクラッチの腹は決まり物語は終息に向けて加速するのだった。

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