第144話【幸せな夢の話】

「まず魔法や外術の研究家と魔法使いの違いを説明しよう

魔法使いは魔法を使う者、研究家は魔法に対する研究を行う者だ」

「魔法使いは魔法の研究をしないのかよ?」


ストーンが口を挟む。


「当然行うだろう、だが比重が違うんだ」

「比重?」

「例えば・・・」


魚を右手に取って木の実左手に一つ持つデル。


「魔法使いは魔法を使って利を得る、そして偶に研究を行う」


魚を半分食べて、木の実を大量に持つデル。


「研究家は研究を行って利を得る、偶に魔法を行うと言う感じだ

厳密にはもっと違うが分かり易いだろう」

「何となくイメージは掴めた、それで罪人の虐待と言うのは?」

「うむ、罪人を使って魔術や外術の研究をしていたのだが

それが行き過ぎて疎まれて排斥されたんだ、残念だ・・・」


肩を落とすデル。


「罪人を使って?具体的には?」


デルは罪人を使った実験の数々を語った、あまりにも冒涜的な内容の為

内容は伏す、クレールは吐き、ダニエルは蒼褪め、ストーンは顔をしかめる。


「デル、お前さん、それは捕まってもしょうがねぇよ・・・」

「何を言うか!!研究が完成すれば

誰でも手軽に魔術や外術が使える時代になったのかもしれないのだぞ!?

実際理論の基礎は完成しかけていたんだ!!」

「・・・マジで気分悪い、デル、黙ってろ・・・」


かすれ声でダニエルが漏らす。


「ちょっと待てデル、誰でも魔術や外術が使える?

詳しく教えてくれ」

「おうストーン聞いてくれるか!!

この話をすると皆変な顔をして嫌になっていたんだよ!!」


デルが打って変わって生き生きを話し始めた。


「まず外術を使ったのは人間なのだから同じ人間である我々が使えない道理は無い

強力な魔法を使う人間も同じ理論で同じ魔法が使えない訳が無い

だからと言って使える人間と同じ労力をかけていては意味が無い

使える様になる為のパターンが有る筈なんだ、パターンが

このパターンを知る為に私は数々の罪人を被験者に実験を重ねて来たんだ

それなのに頭の固い連中と来たら」

「それは俺達に転用出来るのか?」

「転用?」

「つまり俺達みたいな奴でも魔術や外術が使える様になったりするのかって話だ」

「・・・・・・・・・・」


デルの表情が固まる。


「ストーン」


ストーンを抱きしめるデル。


「その発想は無かった!!ありがとう!!」

「お、おうどういたしまして・・・」

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