第122話【興味深い仕事】

グレートヒェンの武具を見るヴィンセント。


「・・・剣の刃零れが酷いな、何を斬った?」

「投げられた大岩等を・・・」

「普通の剣だったら剣毎お前さんの命もぶっ壊れてたぞ

俺様程じゃないが良い職人の手で作られた剣だよコイツぁ・・・」

「我が家の家宝だそうです」

「家宝が酷い有様だな・・・研ぎ直しても再起は無理っぽいぞ」

「ですので新しい剣をと思いまして・・・」

「・・・・・ふぅん・・・」


剣を見てヴィンセントは悟った、多少の刃毀れは自分で研ぐのだろうと。


「しかしいい仕事だ、柄をそのまま流用しても構わないか?」

「良いですね、握り易い柄でしたし」

「本当にいい仕事をしているよ・・・

こんな良い品を残してくれた家に感謝しろよ」

「家に感謝、ですか・・・」

「・・・如何した?」

「いえ、何でも・・・」


家に感謝、そう言えばした事が無かったな、と回顧するグレートヒェン。

騎士の家系で女児しか生まれなかった自分を騎士をして育てた父。

世間体の為、誇りの為、そう語っていた父を恨んだ事も有った。

しかし今では恨めない、父は亡くなった母を深く愛していた。

さっさと新しい妻を娶って

男児を生ませれば話は早かったのにそうする事を拒否した。

そして自分を育て上げた結果、自分はファウストと出会えた。


「・・・・・」

「まぁ色々有るから詮索はしないよ、興味深いがな」

「興味、ですか?」

「何にでも興味を持つと言う事は重要な事だよ

鍛冶をやっていると鍛冶だけしか出来なくなる、でもそれじゃあ駄目なんだよ

俺様の腕の何割かは俺様の武具を使っている腕の良い客達の名声も有る」

「・・・つまり?」

「俺様の武具だけじゃなく俺様の武具を使っている奴の腕が良いから

俺様の武具の評判も上がるって事だ、俺様の鍛冶の腕は王国一だが

俺様の武具の強さを宣伝してくれる顧客が居なけりゃ始まらないしな

武具だけじゃなく武具を使う奴にも興味を持たなきゃいけねぇよ」

「なるほど・・・

でも貴方は今こんな人里離れた場所に居を構えている、その理由は?」

「ま、色々有ってな」

「興味深いですね」

「色々有るから詮索しないでくれよ、じゃあ仕事は明日から取り掛かる」

「分かりました、では外で待っていますので」

「外で待つ?」

「野営します」

「一旦帰ったら連絡入れるぞ?」

「出来上がりが楽しみなので」

「変な奴・・・好きにしろい」

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