第93話【流浪の銃士は口を開く】

ファウストが5人、と言う状況を思い浮かべて戦慄する。

しかしスクラッチは


「ありえんな」

「な、何故?」


ノートゥが震えながら続きを促す。


「お前がファウスト並の実力者になったら同じファウスト並の実力者に従うか?」

「・・・従わない」

「つまりそういう事だ、強くはなるだろうが

脊髄の様な中枢部位以外の部位ならば教化も左程じゃないと推測する」

「で、でも推測じゃない・・・もしもファウストが5人居たら・・・如何するの?」

「その時は死ぬしかないだろう」

「そんな無責任な!!」

「落ち着け馬鹿、良いかファウストが5人居たとしよう

如何やって勝つ?王国のリソース全て使ってでも良いとしてだ」

「・・・勝てない」

「つまりそういう事だ、ファウストが5人居たら

どんな作戦も人数も地の利も、ありとあらゆる事態が味方しても

勝ち目なんて最初から無いんだから居ない方に賭けるしかねぇんだよ」

「スクラッチ殿の意見には一理有るかもしれないが訂正をしておこう」


ヴァーグナーが話し始める。


「訂正?」

「『御使い』には十一人の実力者『士』が居る」

「士?何だそれは?」

「聞いた事が無い・・・」

「ウェブスター、知っているか?」

「噂だけならば存じ上げています、しかし実在するのですか?」

「実在します」


確信をもって答えるヴァーグナー。


「その情報のソースは?」

「私は当代『御使い』の首領の息子です、いや勘当されたので元息子ですか」


周囲にざわめきが走る。


「初耳だな」


スクラッチが口を挟む。


「剣術を得手とした武術の名門貴族の一人息子と言った筈です

一応『御使い』の首領は貴族として扱われているので」

「へっ」

「何故勘当されたのですか?」


ウェブスターは構わずに問う。


「剣の腕が悪かったので」

「・・・それだけの理由ですか?」

「信じられないでしょうが今の首領は剣の腕の良し悪しのみで人を判断するんです」

「馬鹿じゃないのか?親として可笑しいぞそいつ」


呆れるシュルトゥ。


「えぇ、私も過去は自分の腕の無さを呪いましたが

今では完全に毒親だったと思います、寧ろ勘当してくれて離れられて幸運でしたよ・・・」


遠い眼をするヴァーグナー。


「ヴァーグナー?」

「失礼、話が脱線しましたね

十一人の実力者『士』についてお話ししたいと思いますが宜しいでしょうか?」

「・・・知っておく必要が有るな、是非とも話してくれ」


誰はとも無く話を始める事になった。

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