第92話【流浪の銃士は話を聞く】

ウェブスターは海図を拡げて指し示しながら解説を始める


「大海城、嘗て王国が外法の使用によって不安定になり

不安定な国を無理矢理押さえつける為に作られた巨大な城の一つです

その名の通り海の真ん中に有ります、元々は岩礁だったのを埋め立てて土地を作り

その上に建てた城です、海上から来る魔物の防波堤としての意味合いもあり

城と言うよりは戦砦、海に浮かぶ城塞都市と言った方が伝わり易いでしょうか」

「なるほど・・・これは難攻不落だな」


シュルトゥが腕を組みながら納得する。


「そしてその大海城を守護するのが『御使い』と呼ばれる者達です

これが我々に反旗を翻した者達です」

「強いのか?」

「ええ、我々王国に陸軍が有って海軍が無いのは彼等『御使い』が

海からやってくる魔物を粗方始末してしまうからです」

「その代わり御使いには一つの軍と同じ位の援助金が出ている

それなのにまさか反旗を翻すとは・・・」


騎士団長ハンスが重々しく口を開く。


「勇者ファウストの遺体は反乱を起こして迄

手元に置きたかったと言う事でしょうね」

「その様ですな、玉座に釣り合う価値が有るのでしょう」


スクラッチがウェブスターの言葉に追従する。


「しかしウェブスター殿、一つ疑問が有ります

今回の混成軍、ファウストの遺体を手に入れた場合

今回は誰の手に遺体が渡るのですかな?

取り合いになってしまうのは困り者ですよ?」

「それは問題有りませんスクラッチ殿、大海城に有るファウストの遺体は

少なく見積もっても5つ以上あるとの情報をキャッチしてあります」

「ほう・・・なら大丈夫ですかな?」

「スクラッチ殿、今回は陛下からも内輪揉めは厳禁だと言われている

我等騎士団は無様な取り合いはせん、案ずるな」

「そうですかな?我々が活躍して我々だけの功績ならば遺体を独り占め出来ると思いますぞ?」


ハンスの言葉に副騎士団長ヨナスがさりげなく反論する。


「・・・一つ聞きたいんだけどさ、ファウストの背骨が刺さった

王様をファウストの体と同じ状態にするのならば

他の遺体にも同じくファウストの体と同じ状態にする力があるんじゃないのかな?」


ノートゥが恐る恐る口に出す。


「ノートゥ殿、それはつまりどういう事ですかな?」

「だ、だからファウストの体の一部を体に入れたら

ファウストと同じ肉体になるじゃないのかって話

ファウストが5人以上居るのなら・・・この手勢でも勝てるか不安ですよ・・・」

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