第63話【英雄来たりて暗愚を掃う】

その男はふらりとヴィッテンベルクの外からやって来た。


「待て、この街に何用だ?」


検問をしている騎士が止める。


「ここの主のジェラールって言う奴を捕らえる様に

ゴーチエ大公から命じられた者だ、通してくれ」

「・・・通す訳には行かないな、帰れ」

「あ、そう、じゃあ通るね」


そう言いながら街の中に入ろうとする。


「通さないと言って・・・」


止めようとした騎士は槍を向けるが奪い取られ逆に槍を腹に受ける事になった。


「がふっ・・・」

「お、おい!!如何した!?」

「あー、気にしないでくれ、通してくれれば済む」

「何を言っている!!」


騎士達は男に向かって来るが男は巧みな槍裁きで次々と騎士達の首を刎ねる。

まさに手慣れたと言う様で。


「ひっ!!」


騎士の一人が逃げ出し、二人が逃げたし、皆が逃げ出した。

遠くから矢を放つ騎士も居たがそれも槍で弾かれ、落ちていた槍を投げられ

その騎士も殺された。


「じゃあ通るぞ」


事も無げに男は言って先に進んだ、まるで家の玄関を通る様に。

男は街の中を進んだ。


「さてジェラールって奴は何処に居るんだろうか・・・」


男は道を尋ねる為に家の一つに入った。

家の中から火炎瓶が投げつけられたが、男は火炎瓶を割らない様に槍で受け止め

器用に手で受け止めた。


「な!?何だと!?」

「いきなり入って来てすまないが道を教えて貰えないか?」

「道だと!?」

「あぁ、ジェラールって奴を捕まえないと行けないんだが

そいつの居場所が分からない」

「ジェラールを捕まえる!?アンタ一体・・・」

「俺か?俺の名はスクラッチ、次期王国近衛長だ、覚えておけ」

「おぉ・・・やっと助けが来たか・・・」


家の中の住民がジェラールの屋敷への道のりをスクラッチに教える。


「ふむ、ありがとう」


スクラッチは鼻歌交じりに騎士団と住民達の小競り合いを抜けて

ジェラールの屋敷に辿り着いた。


「ここか・・・」


スクラッチは屋敷の門を蹴破り中に入って行った。


「何者だ!?」


クレールが拳銃を構えてスクラッチと対峙する。


「ゴーチエ大公の使いだ、ジェラール君は御在宅かな?」

「なっ・・・くっ!!」


クレールは銃を撃つ、だがスクラッチは槍を振り回し銃弾を叩き落とす。


「そんな馬鹿な!!」

「馬鹿はお前だ、殺されるかジェラールの所に案内するかさっさと選べ」

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