第64話【暗い情】

「・・・主人を」


差し出すメイドが何処に居るんだ、とクレールは言葉を紡ごうとしたが

全て言い終わる前にスクラッチに蹴り飛ばされて倒れた。


「・・・・・」


スクラッチは武装解除してクレールを抱えると奥へ向かって行った。

屋敷中を探し回りスクラッチはミシェルとジェラールを見つけた。


「な、く、クレール!?」

「何者ですか?」

「ゴーチエ大公からの使いだ」

「ば、馬鹿な早過ぎる!!ミシェル!!

君の計算では動くのはもっと後の筈じゃないのか!?」

「俺一人で来たからな、準備とか要らんよ」

「一人・・・馬鹿な!!あの騎士達を一人で退けただと!?」

「雑兵の100や200何の事は無い」

「・・・・・私の想定以上ですね、申し訳ありませんジェラール様」

「君のせいじゃない・・・でも何なんだ君は?一体どこの誰なんだ?」

「スクラッチだ、聞いた事無いか?」

「スクラッチ・・・」

「勇者の仲間の槍使いですね・・・それが何故ここに?」

「ゴーチエ大公から頼まれたからな」


事も無げにスクラッチは言った。


「・・・・・それだけか?」

「おいおい、国の事実上のナンバーツーからの直々の依頼だぜ?

断る方がどうかしているだろう、まぁ俺だから良かったぞお前達」

「・・・何?」

「俺以外のファウストの仲間が来ていたらお前達こんな悠長にお喋りせずに

速攻で殺されてたぞ?」

「勇者の仲間とは随分と冷酷なのですね?」

「いやいや温情に溢れている故にお前等を許さないと言う事だ

外道にかける情けは無いと言う事だな」

「外道!?僕達が外道だと!?」

「当然だろう、国を救った英雄を賞賛するどころか排斥したのだから」

「・・・何の話だ!?」

「義勇軍にした事について言っている」

「連中は僕の父を殺したも同然の連中じゃないか!!なぁミシェル!!」

「・・・・・」


悲痛な顔で黙るミシェル。


「・・・ミシェル?」

「兎に角だ、義勇軍達と俺達は一時期とは同じ釜の飯を食い

仲間の一人も義勇軍と共に戦って死んだ

言うならば義勇軍も勇者一行の仲間だと思っている

俺は俺以外の奴が死のうが大して気にも留めないが

他の連中は仲間が殺されたら報復する位の情が有る連中だ

俺に話が回って来て良かったな?」

「何が仲間だ!!君達にとって仲間でも僕にとっては父さんの仇だ!!」

「それは違うぞ?」

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