第57話【暗い目覚め】

宿屋で一泊して街から出る事にしたグレートヒェン。

こんな街では当初の目的の路銀稼ぎも

まともに出来ないと早々に出立する事にした。

そして一晩明けた朝。


「うわああああああああああ!!」


男の悲鳴で目が覚めた。

宿の窓から外を見渡すと町中のそこかしこに人々を無理矢理家から引き摺り出す騎士達の姿が見えた。


「な、何だこれは・・・」


ガチャリ、と宿の部屋のドアが開く。


「おはよう、失礼な旅人さん?」


クレールが騎士達と共に部屋の中に入って来る。


「この地方では朝早くから女の部屋に勝手に入るのは失礼じゃないのかしら?

寝間着姿だし着替えたいのだけど」

「後にしなさい」

「子供だから礼儀を知らないの?」

「黙りなさい!!」


拳銃を取り出し構えるクレール。


「・・・・・一体何の用?」

「ふむ、実は領民達から兵を集め義勇軍を結成する事になった」

「・・・・・何ですって?」

「実は大公殿から命令が有ってね、人手が必要なんだ」

「なるほど、なるほど、それで無理矢理領民達をかき集めて義勇軍を作ろうと・・・」

「その通り、今まで領民達は身勝手に動き過ぎている、だから」

「身勝手なのはこの領地の現当主でしょう」


バンッ、と拳銃を討つクレール。

グレートヒェンから外した所に撃っている事から威嚇射撃だと推測される。


「戦場に出た事も無い子供が何を勘違いしたかは知りませんが

生き残りを逆恨みして義勇軍の面々を殺し

今は無理矢理自分の為に働かせようとする

これが身勝手じゃなければなんだと言うんです」

「さっきのは警告だって分からないの?」

「義勇軍を殺し、身勝手に自分達の為に義勇軍をもう一度作ろうとする

貴方の身勝手さには眩暈すら覚えますよ」

「兵力として義勇軍に加えようと思ったけど止めよ、お前はここで死ね」


バンッ、と拳銃を撃つが避けられ蹴り飛ばされ廊下に放り出されるクレール。


「なっ!?」

「おのれ!!良くもクレール殿を!!かかっ」


れ、と言う前に剣を取ったグレートヒェンに首を飛ばされる騎士達。


「ひっ、ひぃいい!!」


生き残りの騎士達が慌てて逃げ出す。


「ちょ、待ちなさい!!」


クレールも逃げる騎士達の後を追う。


「全く朝御飯も食べない内に面倒な事になったわね・・・」


そう言いながらグレートヒェンを寝間着を脱いで着替えを始めた。

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