第37話【訝しむエルフ】

「妙だな」


控室の窓から外を見る族長


「何がだ族長」

「護衛の数が少なすぎる・・・以前の族長会議の半分

いや3分の1、もっと少ないかもしれない」

「なるほど、それで私が呼ばれた訳か、得心したよ」

「いやマンゲル、これは余りにも少な過ぎるぞ」

「だが逆にさっきのハイエルフの護衛の配置に関しては得心がいったよ

数が少なくなったから護衛の配置の仕方を変えたんだ

では何で護衛が少なくなったのだろうか?」

「・・・分からんな、マンゲル」

「魔王との戦いで減った」

「それは無いぞ、マンゲル、ハイエルフは魔王との戦いは愚か

外敵との戦いは滅多にしないのだ

連中は戦う術を持っており自らはエルフ達の頂点と思っている様だが

己の純血を尊ぶ連中は己の血を好き好んで流さない

精々この族長会議の護衛程度の事しかしない」

「じゃあケチって護衛の数を減らした?」

「それも無い、ハイエルフは見栄っ張りだ

お前はハイエルフの里を見た事が有るか?」

「いや?だが噂は聞いている、何でも王侯貴族の如くの成金趣味だとか」

「その通り、連中がこうも見え透いた護衛の削減も在り得ない」

「では何故護衛がこんなにも減っているんだ?」

「分からんな・・・他の一族の元にも行ってみるか」


族長が部屋の外に出る


「何方に?」


ハイエルフの護衛が尋ねる


「他の一族の所へ」

「何故?」

「久々だから顔を見ておきたいじゃないか」

「申し訳無いが会議までここに居て下さい

ハイエルフの族長からの指示です」

「指示だと?一体何時からハイエルフの族長は他の族長よりも偉くなったんだ?」

「申し訳無いが護衛の数が少なくあまり移動されては困るんです」

「先も言ったが私が居るから良いだろう?」


マンゲルが族長と護衛の会話に割って入る


「良く分からんがマンゲルの言う通りだよ、キミィ」

「!!」

「君達は山エルフの一族か」


山エルフの一族は主に鉄鉱山での採掘を生業としている

王国の鉄の半分は山エルフが産出していると言っていい


「久しいなマンゲル」

「ライヒャーか、君も呼ばれたのか?」


ライヒャー、彼は山エルフの中でも最強と謳われた武人である


「呼ばれた?何の事だ?」

「マンゲルを護衛にとハイエルフから要請が有ってな」

「何だ、それは、山エルフではそんな事言われなかったぞ」

「全く持って妙な話だ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る