第33話【弓を手にするエルフ】

マンゲルは馬車の上で勇者ファウストとの出会いを想起する


―――――


魔王討伐の旅の最中にエルフ一と称えられた自身の弓の腕を見込んで勧誘しに来た

それがファウストとの出会いだった


その頃のマンゲルは自信過剰な所が有り、人間を見下す悪癖が有った


「人の子と共に魔王討伐に出向けと?族長、その意見には賛同しかねる

そもそも人の子の勇者とやらに任せずに我々で魔王討伐軍を組織して

魔王を討ちに行くのは如何だろうか」


自身の下にやって来た族長の要請を断るマンゲル


「マンゲル、それは無理と言う物だ」

「何故?」

「エルフと人が何方が優れているかと言う問いだが

魔力や長寿等エルフの方が優れている面が有り普通の人間と比べて

エルフが優れていると言いたいのだろう?」

「その通りだ」

「だがしかしエルフは圧倒的に数が少ない

強い数人で戦争に勝てるとは私には思えない、そして全てのエルフが戦える訳では無い」

「族長!!」

「そしてエルフが如何に人間よりも秀でているとしても首を斬られれば死に

心臓を抉られれば倒れ、頭を射抜かれればそこで終いだ

私にはエルフも人も同じ生き物にしか見えぬ」

「族長!!その意見には賛同しかねます!!」

「俺も同意見だが?」

「「!?」」


族長の後ろより現れる勇者ファウスト


「貴様が勇者とやらか」

「ファウストと言う、マンゲルよ、族長さんが言っている事は正しいよ」

「人もエルフも同じ生き物だと?」

「事実そうではないか、そして魔王も生き物だ、殺せば死ぬ

俺は自分が如何なっても良い、唯魔王を殺せれば何でも良いんだ」

「魔王を殺せれば、か、勇者よ、お前にそんな実力が有るとでも?」

「逆にマンゲル、君にエルフ一の実力が有るのか測りたい」

「勇者殿、マンゲルを挑発するのは」

「いや、族長、勇者の言葉も尤もだ」


弓を手にして立ち上がるマンゲル


「表に出ろ」

「あぁ分かった」


外に出るファウスト


「話は纏まったのか?」


外で待っていたスクラッチが尋ねる


「いや、これから纏める所だ」

「これから?って、如何言う・・・」

「さてでは勇者殿、如何やって私の実力と其方の実力を測り合うのだ?」


ノートゥの言葉を遮ってマンゲルが尋ねる


「これは異な事を言う弓を引く者の実力は弓を引かせなければ分からず

剣を使う者の実力を剣を振らせなければ分からない

ならば互いに剣と弓を使うしか方法は無いのではないか?」

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