背骨の章

第1.5話【処刑前日】

王国首都シュタウフェンの特別監獄に一人の男がやって来た

男は着物を着ていて頭に笠を被っていた


「止まれ、何者だ?」


看守が男を制する


「銃士ヴァーグナー」


流浪の銃士ヴァーグナー

勇者と共に魔王討伐に参加した英雄の一人である


「し、失礼しました!!そ、それで如何成されました!!」

「ファウスト殿に面会したい、取り次いでくれるか?」

「は、はい!!只今!!」


看守の先導でファウストの牢屋に向かうヴァーグナー


「こ、こちらです」

「御苦労、君は下がって良い」

「は、し、しかし」

「・・・・・」

「・・・わ、分かりました・・・」


とぼとぼと帰る看守


「さて・・・ファウスト殿、起きていますか?」

「・・・君か」


牢屋の中で起きるファウスト


「久々に会えたと思ったら牢屋越しですか」

「それは仕方のない話だ」

「貴方ならこんな牢屋位吹き飛ばせるでしょうに」

「前にも言ったがもう生きている意味が無いからねぇ・・・

ここからの人生は蛇足だ」

「それは重々承知しています

ですが此方には貴方に腐っていた所を救って頂いた恩が有ります」

「俺は唯、後方支援として銃の使い手が必要だったから君に声をかけただけだ

恩に着る事は無い」

「貴方が居たからこそ世界を救おうと私も思ったんです」

「そうか」

「・・・なのに貴方が死ぬ事を許容しろと?恩を返せずにただ見殺しにしろと貴方は言うんですか?」

「恩を返す為に生きる気の無い人間に生きろと言うのか

恩返しさせろ、との強要は初めて見た」

「茶化さないで頂きたい、そもそも何故死にたがるのですか?」

「もう生きるつもりが無いんだよ」

「だからと言って死ぬ事は無いじゃないですか

僕を納得させられるだけの事情が有るんですか?」

「素に戻ってるぞヴァーグナー」

「そんな事を言っている場合ですか!!」

「・・・・・まぁ一応事情は有ると言えば有る、納得して貰えるかは分からないが・・・」

「女性陣を始め他の仲間達にもこの結果に納得していない人は多いですし

是非とも理由をお聞かせ願いたい」

「それはだな・・・・・・・・・・・」


ファウストは事情を話した、ヴァーグナーの顔が悲痛に歪み壁に倒れ掛かる


「・・・・・っ!!」

「俺だって馬鹿みたいな理屈だと思うさ、だが仕方ねぇだろ俺馬鹿だし

頭良かったら【無刃造】なんて馬鹿な外法作ったりしねぇよ」

「馬鹿みたいだとは思いません・・・だけどこんな事彼女達にはっ!!」

「・・・黙っているのが良いだろう」

「・・・・・そう、ですね、これは僕の胸の内に秘めて置く事にします」

「すまないな・・・俺の恩に報いたいならすっぱりと死なせてくれ、もう終わりにしたいんだ」

「はい・・・失礼します」

「さらば、友よ、次は冥府で会おう」

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