しらすの短編たまり場

しらす

第1話 吾輩は……

今日もいい天気だ


もう11月だというのに、空には雲一つなく日差しが心地よい


一つ大きなあくびをかみ殺すと、ぼくは歩き出した


散歩をするのは好きだ


何も考えず、目的も持たず、ただあてもなくさまよう……


そうしていると、心が洗われる気分だ


ちょうど公園に差し掛かったとき、知り合いのミカさんにあった


本名は知らないが、周りの人は彼女をミカさんとよんでいる


だからミカさんだ


ミカさんのことは好きだ


優しくて、いつも笑顔で、たまにおやつをおすそ分けしたりもしてくれる


ぼくのお嫁さんにしてあげてもいい


ただひとつ、ぼくよりも背が高いのは複雑な気持ちだ


男として、やっぱり彼女よりは背が高くありたい


ぼくは小さいほうだから、どうしても気にしてしまう


ミカさんに別れを告げると、ぼくはまた歩き出した


それにしても本当にいい天気だ


こんな日は芝生の上でお昼寝をしたらさぞかし気持ちがいいのだろう


そうだ、そうしよう


ぼくはお昼寝をすることに決め、お気に入りの芝生がある広場へと向かった


お気に入りの芝生に着くと、しかしそこには先客がいた


ユウ君だ


ユウ君はいつもぼくの邪魔をしてくる


この間もぼくのお気に入りの木陰を独り占めしていた


でも、ユウ君はまだ子供だ


ぼくはもう立派な紳士なのだから、これくらいのことで怒ったりはしない


仕方ないから家に帰って縁側に居座ることにきめる


ぼくの家の縁側は、ちょうど南向きだから日差しが当たってとても気持ちいい


狭い路地を抜け


公園の中を横切り


川に沿ってしばらく歩く


そこはもうぼくの家だった


普段は玄関から入るのだが、今日は近道をしよう


そう思って裏手に回ろうとした時だ


ふいに視点がぐっと上に持ち上げられた


ご主人様だ


彼女はいつもぼくを持ち上げてくる


ぼくが立派な紳士であることをわかってないからだ


ぼくは不満を声にあらわした


「みゃ~お」

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