輪廻転生~2回目の円環~

クロムさん

第1話

何度

何度この悲劇を繰り返せばいいのだろう

もう、流す筈の涙も枯れてしまった

大切なものを失って、そして自分を失う

そうして、死ぬ度に輪廻転生を繰り返し続けている

最初の頃は何度も試行錯誤を繰り返し、何度も失敗しては泣き叫び続けた

でも、輪廻転生を繰り返す内に何か大切なものを失った

人間としての何かを失い続けた

そんなある時だった


「また、守れなかったな」

動かなくなってしまった屍に声をかけ、髪を撫でる

それは、大切だった人

守ると誓った人

それを失った筈なのに、涙は出てこない

「生憎、お前の為に流す涙は枯れてしまったんだ」

なぜ、こんな言葉しか出てこないのだろう

もっと前の自分であれば、泣いて謝り続けただろうか

今となってはそんな事さえ分からない

「また、だな」

青年を光が包み込み始める

いつもの事だった

こうして、大切な人を失う

その結末が確定すると転生の時が訪れる

「また、会えるといいな」

皮肉を込めたような声音で大切だった動かない人へと告げる

そして、いつものように同じ人生を繰り返すと思った

いや、思っていたのだ

「ここは…?」

黒い空間

どこまでも続く暗黒の闇、それ以外は何もなかった

「やぁやぁ、こんにちはルカくん」

誰かに声をかけられる

声の主は濃霧の中に居るように、姿がはっきりと捉えられない

「誰だ?そして、なぜ俺の名を知っている?」

声の主に問いかける

念のため、臨戦態勢をとりながら

「そんなに構えなくていいのにな~」

ますます、分からない

相手の声は少年とも少女ともとれるような声をしている

「誰かと聞いているのだが?」

前世界で所持していた銃の銃口をむける

「僕は、そうだね~。神様かな?」

ふざけているのだろうか

そう、思った

「生憎、俺は神を信じないんだ」

そういうと、自称神様は少し困ったような表情を見せたように感じられた

「どうすれば、信じてもらえるかな~。君の生い立ちを此処で寸分違わず話してあげようか?」

正直、馬鹿なのかと思った

他人の生い立ちなど知る由はない

それにこの忌々しい輪廻を知るのは自分だけだ

「話せるなら、話してみろ。本当に寸分違わず話せたら、貴様を神としんじてやる。」

すると、自称神様は少しはにかむような様子を見せて、口を開いた


「ざっと、こんな感じじゃない?」

自信満々の声音でそう言いながら、胸を張っている ように見えた

「っ…」

体を衝撃が駆け巡った

こんな、感覚はいつぶりだろうか

確かに自称神様の話した事は寸分違わず合っていた

大切な人の名も

この忌々しい輪廻の事もあっさりと話してみせた

「解った…今はお前を神だと信じよう…」

ここまで、されたなら信じるしかないと諦めた。

「それで、用件は何だ?俺は転生しなくてはいけないだろう?」

「話はそれについてなんだよ。ルカくん」

今更こんなものについて何を話そうというのだろうか

そんなことを思いながら

「話してみろ」

そう言って話を促す

無意識の内に微かな希望を抱いてしまったのかもしれない

「そうだね~。じゃあ、単刀直入に言うよ。ルカくん、第二の人生を歩み始めるつもりはないかい?」






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