燃えて、妬き尽くす片恋

葉村コト

第0話 プロローグ

好きな女の子がいる。

 俺――南雲なぐも一斗いちとと文字を介して初対面となるあなた・・・にこんなことを告白するのは、なんとなく恥ずかしいが、この物語を開始するにあたって、この告白をしておいた方がいいと判断した。だから、洗いざらい話すことにする。

 さっき言った『好き』というのはライクではなく『ラブ』だ。しかし、高校生の抱く『ラブ』は往々にして適当なものだ。可愛いからとか、面白いからとか、だんだん好きになるんじゃなくて、一目惚れをするのだ。

 かく言う俺も、一目惚れ……だった気がする。多分そうなのだが、かなり前のことで、曖昧にしか覚えていない。

が、確かなのは、俺は今でも彼女を好きでいることだ。

俺は彼女に恋をしている。一度、砕けて泣いたけれど、それでもなお恋をし続けている。そうできるのは「友達でいたい」と言ってくれた彼女の優しさに他ならない。恋心は受け入れてもらえなかったけれど、友達としてなら受け入れてもらえた。

今思えば、それがいい決断だったのかもしれない。俺は片想いをし続けることで、安心感を得ていることに気付いたのだ。

いつでもこの恋を止やめられる――片想いだからこそ、嫌になったら止められる。

俺の抱く、思春期の恋心は所詮、淡いものだ。絶対いつか消えてなくなる。一瞬の気の迷いで、一時の夢なのだ。いつかは覚める――冷める。

でも、まだ俺は好きだ。彼女の笑顔を見ているだけで、今は幸せだ。

じゃあこの先は?

そんなの、考えなくていいだろう。

俺はまだ、高校生だぜ? 

今のことだけ考えて、生きていきたいさ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る