第17話 ミイの成長過程

 

 スラム街。ダーティー街並。

 産業廃棄物が転がり、悪臭で一般の人間なら歩けたもんじゃない。

 さらには、真夏の太陽がガンガンに照りつけ、腐敗した塵芥が悪臭を強烈な物とする。

 醜穢。


 人気ひとけがあまりなく、道の真ん中に堂々と歩く人物などいない。

 路地裏や隅、日陰に座り込み、屯する人。

 白Tシャツが黒くなるまで着続けた服を着て対話。


 ガンガンに照りつける太陽が隠れる日陰に体育座りいる黒髪の女の子がいた。

 ミイ14歳。

 白いタンクトップが薄汚れ、髪の毛もボサボサ、フケが落ち、身体中も汚い。

 足や腕には傷を負い、傷口が化膿している。


 もちろん、医療機関などなく衛生管理も崩壊。

 朽ちた街だ。


 ミイは一点を見つめ、ただ感情がなくひたすら座り尽くしていた。


 すると、このスラム街では見慣れないスーツを来た男性が歩いて来た。

 ミイの目の前で立ち止まった。

 ミイは見上げると、ハットを被り、白髪に白い髭を生やしたジェントルマン。


「きみ、年は?」


「・・・14」


「・・・」


 ジェントルマンはポケットから、5枚程のお札をミイへ向けた。


「・・・くれるの?」


「ああ、あげるよ」


 ミイはお札を受け取り、握りしめた。


「さあ、こちらへ」

「私と一緒に来なさい」


 ミイは安堵の表情でジェントルマンと手をつなぎ、車へ一緒に乗った。


 車は走るだすと、ミイは疲れと安堵で瞼を閉じていった。



 ※ ※ ※



 車が停車した。

 眠っていたミイがジェントルマンに起こされた。

 目覚めると大きな豪邸が目の前に立ち尽くしていた。

 ミイは人生で見たことも無い大きく立派な豪邸に少し戸惑っていた。


「今からここで私と暮らすんだ」

「ここが君の家だ」


 ミイはその言葉で気持ちが緩み、笑顔になっていった。



 ※ ※ ※



 湯気。

 水圧の強いシャワーが、ミイの身体中の老廃物を洗い流していく。

 黒い汚れと清潔な水が濁り、どれだけ身体が汚れていたのかが見て分かる。

 シャンプーで髪を洗い、石鹸で身体の隅々まで洗う。


「どうかね? 気持ちいいかね?」


 ドアの外から声が聞こえた。

 ジェントルマンの声だった。


 ミイは何て優しい人なんだと気持ちが高ぶっていた。


「はい」



 ※ ※ ※



 ダイニング。

 白のクロスが敷かれた大きなテーブルに次々と運ばれてくる食事。

 ミイはどれも美味しそうな料理にヨダレが垂れそうになっていた。


「お食べ」


 その言葉に笑顔になったが、すぐに愁眉。


「もしかして、ナイフとフォークの使い方が分からないのかね?」


 ミイは頷いた。


 ジェントルマンは優しい表情で、切り方やフォークの指導を行うためミイの背後に回り、ミイの手に触れたー


 次の瞬間、ミイの脳裏に映像が流れた。



 ※ ※ ※


 〈ミイが見た映像〉

 バスタオル1枚の男性がキッチンでグラスにオレンジジュース注いでいる。



 ※ ※ ※



 脳裏に流れた映像が消えた。


 ジェントルマンの指導が終わり、ミイの肩をポンっと軽く叩いた。

 再び脳裏に映像が流れた



 ※ ※ ※


 〈ミイが見た映像〉

 男性はグラスに注がれたオレンジジュースに

 ポケットから取り出した、白い紙に包まれた白い粉をグラスの中入れ、マドラーでかき混ぜた。



 ※ ※ ※



「食べなさい」


 優しく問いかけるジェントルマン。


 ミイは一体何が起こったのか全く分からない。

 脳裏に映し出された映像は何なのか

 あの男性、ジュースに入れられる白い粉は何なのか、少し不安に感じたが、慣れない手付きで食事を始めた。空腹のあまり、指導してもらったナイフ、フォークの使い方は徐々に崩れていった。



 ※ ※ ※



 食事が終わるとジェントルマンは、ミイに少し休むようにと伝えた。


 ミイは軽く頷くと、執事が部屋を案内をした。



 〈寝室〉


 大きなベッド。

 全身を余裕で超える大きさ。

 ミイは、その大きなベッドに飛び込んだ。

 日光に晒されたシーツの匂い。気持ちのいい肌触り。なんて心地いいんだ。


 執事が朝食の時間を知らせ、朝起こしに来ることを伝えられると、礼儀正しくドアを閉めた。


 ミイはすぐさま眠りについた。



 ※ ※ ※



 〈夢の中〉

 簡易的なキッチンが繋がる寝室。


 バスタオル1枚の男性がグラスへオレンジジュースを注いでいる。

 どことなくニヤついているが目元は見えない。


 ポケットから白い包みを取り出し開けると、極僅かな粉も外に零さないようにグラスへ粉を注いだ。


 マドラーでゆっくりかき混ぜるが、粉がうまく溶け込まず沈殿する。


 男性は何度も何度も輪を描くようにかき混ぜたり、上下にかき混ぜたり、水に溶け込むまで混ぜ続けた。


 グラスを照明に当て、溶け込んだことを確認すると、ベッドへ近づいてくる。


 ベッドには髪の長い女性が寝ていた。

 夢の中でミイは一体何をするつもりなのだと思いながらも、男性は女性の口にグラスを近づけ、液体を入れ始めた。


 なんだ?なんなんだ?と、再度思いながら、徐々に2人の顔が確認できていた。

 あの男性は白髪まじりのジェントルマン。

 ベッドで寝ているのはミイだったー



 ※ ※ ※



 ミイは目を覚ました。

 液体が口元に違和感。

 目を開けると、眼前にジェントルマンが自身の口に液体を流し込んでいたー



【NEXT】


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