賭剣士になった主人公にダークとエロと冒険が待ち受けている。。

ジャスミン

第一章 新世界から冒険する賭剣士

第1話 賭けと剣士を掛けたストーリーの始まりの始まり

 

〈主人公の家・アパート〉

 蝉の声。

 夏の日差しがレースカーテンを通して、寝返りを打った男の目に刺さる。

 寝起きなためボサボサな髪の毛に、Tシャツに単パン。

 明らかに眠い、お腹空いた、だるい、ヤル気がないのが伝わるナマケモノのように存在。

 横たわる男の眼前には机、その端には今にも机から落ちそうな1枚の紙切れが。。

 目を見開いた。


「こ、これは・・・」


 次の瞬間、

 先ほどまでナマケモノだった男が、百万馬力の剣士のように1枚の紙切れに目掛けて、

手を伸ばし立ち上がった。


「神よ!神よ!神様よ〜〜!」


 今までと正反対の男が現れたように叫び暴れた。

 紙切れに接吻までかわす。

 それは福引き券だった。


 何故そこまで彼が喜んだのか、後々わかる事だが 不気味でしょうがない。



  ※ ※ ※ 



 〈福引き券売り場〉

 大学2年 沢渡 工さわたりこう(20)


 券を握りしめ、福引きの列に並んでいた。

 順番が徐々に回り、ボロボロになりかけている券を受付のおじさんに手渡した。


「1回お願いします」


 工はなぜか自身に満ち満ちていた。表情はどことなくカッコ良く見える。

「ガラガラガラ」と抽選器を回した。

自身に満ち満ちていた工だが、やはり少しばかり顔がこわばり始めた。


「カランカランカラン 大当たりー!!」


鐘の音が周囲に響き渡った。


「1等 A5ランク松坂牛3kg!!」


 工は、一瞬満面の笑顔になりかけたが、当たって当然のような面持ちで顔色真顔に戻した。

 すると、おじさんが、、


「兄ちゃん1等だよ1等 もっと喜びなよ!」


「ふっ・・・」



 ※ ※ ※



〈宝くじ売り場〉

 スクラッチくじを削る。

 2等、10万円が当たってしまった。



 ※ ※ ※



 〈パチンコ店内〉

 出玉が工の横にどんどん積み重なる。



 彼はある天賦の才の持ち主。

 工は、自分自身が賭け事にめっぽう強いことは、昔から自覚していた。

 そのため、くじ引きや、パチンコでも自信に満ち満ちていた。

 ただ、それが毎回という訳では無い。

 工自信も、調子の良い日、悪い日があるみたいで、割合で言うとハーフハーフって所。

 ただ、外れる時は外れるため、頻繁に天賦の才を使おうとわ思わないそうだ。

 これは賭けというより運が強い!?

 いや、賭けだ、賭けに強い男だった。




 〈帰り道・道・夜〉

 辺りはすっかり暗くなっていた。

 パチンコの景品や食材を手にして歩いている工は、ある工事現場の前に立ち止まり、


「そういえばここは何度も・・・」


 見ている先に、600坪の大きな敷地に鉄骨が組み立てられている。

 どうやらここは、建物が作られようとしている現場。

 骨組みが剥き出しで、規制線が張られている。

 過去に、ここの工事現場は建物が建てられては壊され、また新たに作られようとしていたという。


 豪邸が建てられては壊され、大型スーパーが作られては壊される。

 どれも悪霊が取り付いたと、噂で壊され続けた建物だった。

 そんな工事現場の前に、立ち止まった工は・・・




 〈回想・工事現場・夜〉


 工の幼少期。

 小さな体を埋めながら、母を呼びながら泣いていた。

 怖い、怖いと発しながら、工は友達にいじめられ、1人真っ暗な暗闇の中、 工事現場に取り残されてしまったのだ。

 左右上下、すべて真っ暗闇。

 今にも、この世の物とも思えない物体が現れてもおかしくない暗黒の中・・・

 ひときわ輝く光が、工に近寄ってくる。よく見ると人だ。

 光り輝いているにもかかわらず、顔はよく見えない。

 見えるのは白く輝くシースルーのドレス、金髪、Eカップよりさらに大きな胸、どこかの国の踊り子のようなニュアンス

 香りはラベンダーとバラ、それといくつかの花を組み合わした、とても落ち着く香りが漂う。

 工は幽霊とも感じたが、所構わず振りまく香りから、 怖さがなくなって行き、涙も止まった。

 女性は言った。



「なぜ泣いているの・・・?」

「ううんわかるわ」

「取り残されちゃったのね」



 女性は、静かに自分の額と工の額を重ねたーー

 女性から発する光の一部が、工の体に移って行くーー

 工はどことなく力を貰えた気がし、安堵の表情。

 まるで、太陽みたいに暖かい光が工を包むー

 女性は、工を胸に包み込んだ。


「何も怖くない」

「あなたは強い。あなたならできるわ。信じてる」

 

「あなたなら出来るわ」


 工は一体何を言っているのかさっぱり分からないが、あまりの安心度の高さから怖さ、孤独さが払拭された。

 すると、どこからかすすり泣く小さな声が聞こえた。

 工はすぐに分かった。女性が泣いていたのだった。

 水滴が工の方に落ちていく。

 工はなぜ泣いているのか、これもさっぱり分からない中だったが、話しかけようとは考えなかった。

 なぜなら、訳の分からないことが連続で発生しているからだ。

 見知らぬ女性なのに落ち着く安心感。

 いきなり流した涙。工には理解不能だった。

 女性は立ち上がると、女性の数歩先から新たな白い光が照ってきた。

 女性はその光に歩き始めると、一度止まって、


「あなたは私の一部・・・」


 女性は振り向き、涙笑顔ー


「大好きです」


 その言葉とともに、大きな光が周囲を包み込んだ。



 〈工事現場前・夜〉

 幼少期の頃の思い出が過ぎ去った後、工は何を思ったのか、規制線が張られている工事現場の中に入って行く。

 入っては行けないと自分でも分かっているが、身体がすでに規制線を越えていた。

 懐かしそうに辺りを見渡し、昔自分がうずくまっていた場所に再度うずくまってみた。

 もう一度あの女性に会いたくなったからだ。

 見知らぬ女性なのに、もう一度あの安心感を味わいたいその一心。

 工はどことなく懐かしさを感じていた。



 〈同 回想・工事現場・夜〉

「あなたは私の一部・・・」


「大好きです」



 〈工事現場前・夜〉

 懐かしく感じた場所、思い出を脳裏に焼き付けている最中、過去にも起こった事がある、あの白い光が再び輝き出した。

 そこから、あの女性がまた出てくる出現してくるのではないかと、一瞬思ったが、ただ光が増すだけだった。

 その光の中から以前にも聞いた女性の声。


「大好き」


 その光に引かれるように、光に向かって歩く工。

 光に手を差し伸べた瞬間、工の身体を光が包み込んだ。

 あまりの光量の多さに、工は目を細めた。



 〈異世界・朝〉

 小鳥のさえずり、風にゆられ木々が騒ぐ音、水が滴る音、そして落ち着くあの香り工は思った。

 もしかして、幼い頃に会った女性とまた再会する事が出来るとー

 心臓の鼓動と期待が高まってきた。

 光量が治まってくるー

 太陽の日差しが照りつけ、気温はそこまで高くない。

 春を彷彿とさせる。気持ちの良い空間だ。


 ・・・工は目と口を見開いた


「は、は、はだかの・・女」


 周囲を木々が囲う中心に大きな池。

 工の眼前には、水浴びをしている女性の姿があった。

 細い足だが、どことなく力強く感じる足に、綺麗に突き出たお尻、ほっそりとした身体にも関わらず張りのある大きな胸。

 黒髪が水に濡れ、輝きを増している。

 瞳はキレイな茶色。肩には数字の15という文字があった。

 そして、日本人のような姿だ。

 工はもしかして、あの時の女性では無いかと確信に迫っていた。

 何故なら、その体つきがあの女性にソックリだったのだ。

 それに、あの落ち着く香りは懐かしく感じる物だ。


 工は、舐め回すように視線を顔から足先へ、足先から顔へと向けていった。



 女性は、工の声に気づき視線が合うー

 木々が重なる音のみ、静寂な間が2人を包んだ。

 顔を赤くした女性が大きな声で叫んだ。


「のぞきーー!!」


 その叫び声と共に、工は背後にある樹木まで飛ばされた。

 意識が飛びかけるほどの強い力で殴られたのだ。


 工は、意識をを保ちながら。


「なにすんだ!」


 叫びながら拳を突き上げた。


「何すんだ! じゃないわよ!」


 女性は、思い出したようにこう言った。


「あんたもしかして、週間連続のぞき魔ね!」


 そう言い放ちながら、傍らに置いてあった刀を鞘から抜いた。

 その刀からは、禍々しい殺気を放ちながらも神々しく輝いていた。

 攻撃態勢に入った女性を見た瞬間、背筋がゾッと震えた。

 これが、妖刀だと言うことだ。


「うわわ、ちょっと待て・・・のぞき魔? お前何言って・・」


「とぼけんじゃないわよ! 最近帝都で話題ののぞき魔のことよ!」


「そんなの知らねーって!」

「光を辿ったらここにたどり着いただけで・・ここがどこかもわかんねーし」


 周囲を見渡す工だが、ここが果たしてどこなのか、考えたが全く見当もつかない。


「光? あんたしらばっくれるき!? 鼻血まで出して私のパーフェクトボディーに興奮してんじゃないわよ!」

「この週間連続のぞき魔ハレンチ男!」


 工は、呼び名にハレンチ男が加わったことにムッとした。


「お前何勘違いしてんだよ!」

「鼻血が出たのはお前に突然殴られたからだ! 誰がお前の身体なんかに興奮するか!」

「そもそも理由も聞かずにいきなり殴ってくるとか、どんだけ性格の悪さが滲み出てんだ!この暴力女!」


 2人の距離は、1メートルまで迫っていた。

 熱くなりすぎて、裸という事を忘れていたのだ。

 工は、再度女性の身体に目をやった。

 すると、鼻血が再び垂れてきた。

 その目の動きと鼻血を見て、女性は、再度顔が赤くなり、静寂が走った。

 女性は歯を食いしばった。


「・・・・」

「バチン」と鈍い音が響いた。


 空中に飛ばされほんの少しだが、時がゆっくりに感じた。

 その瞬間、工は思った。


 《工が思った女性2人の比較》

 体つき 似ている◎

 香り  似ている◎

 安心感 似てい・△

 髪色  似ていない✕

 性格  似ていない✕✕


 《幼い頃に出会った女性》

 優しい、憧れ、好き、素敵な女性


 《目の前の女》

 怖い、キツい、嫌い、暴力女



 他にもあの女性と似ていない部分はたくさんある。

 自分が少しでも、あの女性と、この女を勘違いした事に少しイラッとした。

 何故なら性格が暴力女だったからだ。


 工は再び樹木まで吹っ飛んだ。



 ※ ※ ※ 



 〈同・数分後〉

 工の目元に、木漏れ日が差し込み目を覚ます。

 まだ頭がクラクラしているが、力を振り絞って身体を起こした。


 女性は黒と赤を基調とした戦闘服。

 黒のブーツに、キレイな足がスラッと、手首を超える長さまである服、腰には刀、生地は皮を主に主体としている。


「アンタの中身、見させてもらったわ。のぞき魔じゃない事は認めてあげる」

「最初からそう言いなさいよねハレンチ君」


「・・・中身?」


 工は自分の身体を手探りで見渡した。


 女性は顔を赤くしながら、


「勘違いすんじゃないわよ!」


 工はどういうことだと言わんばかりのポカン顔。


「こうあっさり他人に能力を話すもんじゃないけど、アンタには何か通じる物がありそうだから教えて上げるわ」

「私の能力でアンタの感情を覗かせてもらったのよ」


「能力?」


「相手の感情を読み取る能力よ」


「へ、へ〜・・・」



 《能力:ボワイユリスム》

 人や動物などに触れる事で、考えていること、感情を読み取る事が出来る能力

 触れている時間が長い程、幅広く知る事が出来る



 工は瞬時に、これは夢だという事を自覚しようとし、頬を抓ったりしたがこれが現実だった。

 だが、幼い頃に光り輝く女性に突如出会い、また、消える、そして光を辿ると、この女性に出会った。


 ここまで来ると、それがもう夢などではない事は、薄々気づいていたため、すんなりとは行かないが、受け入れがたい事でも大体の事は受け入れられた。


 それに、他の場所から突如やってきたなどと簡単に話しでもしたら、先程まで自分に切り掛かろうとしていたというぐらい、躊躇いもない女性だと感じていたため、下手な発言はなるべくセーブした方が良いと思っていた。


「ところで、アンタどこの出身よ? 見た感じかなりの田舎もんだと思ったけど」


 女性の言葉一つ一つに苛立ちを見せる工だが、ここがどこかも分からない工に返す言葉は一つしかなかった。

 少し焦りながらも工は言った。


「まあ、結構田舎の方から・・・」


「・・・そう」


「あのここ...どこ?」


 女性はつまんなそうな態度で、

「あんた馬鹿ね。それとも田舎の中の田舎出身とでも言うの? ここが知らない人なんて、今まで聞いたことないわ...まあ、いいわ、可哀想だからどこだか教えてあげる」


 その言葉に、また腹が立ったが左も右も分からない工に返す言葉はなかった。


 女性は自信ありげに放った、


「ここは、強さで人のランキングが決まる世界 通称:SID」


 5キロ程先に見えるのは、半径50キロ程にも渡る国がー

 いくつもの闘技場があり、その周辺に街が建て並び、およそ中心にはビル53階分程にも及ぶ巨大な城が立っていた──


【NEXT】

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