百万回死んだ主婦(順不同)
焚書刊行会
あたしは死なない
あたしはメンタルが弱い。心が傷つきやすい。他人の何げないことばでイヤな気持ちになってしまう。胸が苦しくなる。やる気がなくなる。無気力になる。呼吸をするのもつらくなる。生きるのがイヤになる。つまり死にたくなる。
あたしは弱虫のくせに死ぬことについては積極的だ。たとえば首吊りをするときは躊躇せずに踏み台を蹴飛ばす。頚椎や頸動脈が圧迫されたのち意識消失や窒息などを経てあたしは死ぬのだが……生き返ってしまう。体質だ。
原理はわからないけれど、死んだ直後はものすごい生命力が湧いてくる。たとえば首吊りならば首を吊った状態のままロープをひきちぎれるほどの膂力を得る。そうやって再び地面に着地する。飛び降り自殺ならば、いったん飛び散った脳漿などが再結集する。意識を取り戻すと何事もなかったように立ち上がることができる。体液による汚れは残らない。ただし泥汚れなどは消えない。あの不思議な生命力の理屈はわからない。物心ついたときから、あたしは死なない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます