第1章 禁固365年の男、罪状知らん
第1話 え、何の罪で?
「お前に禁固365年を言い渡す!」
目の前で俺に告げるのは友人関係を築けていたと思っていた男で、そしてこの国の王になるだろう相手でもある。
「…………え?な、何の罪で?」
本気で理解出来ず目を吊り上げておかんむり状態の相手へ問いかけた。いや、だって俺、何かしたか?そもそも禁固365年って、普通に生きねーから!それなら終身刑だから!と言う突っ込みを俺は友人である相手へ、口には出さずに目で訴えてみる。
「……っ、お前のした事は全て解っているっ!俺に近付いたのも、それが目的だった訳だな!」
いや、全然解らねぇし!え、どうした?次期王様ご乱心案件か!?心で突っ込みを入れ続けるも、俺の表情では相手に伝わらなかったらしい。周りの、俺達二人を見る視線が特に俺への殺意めいた視線に恐縮するばかりだ。
友人である、
まぁ、一先ず、姿を表すならサラサラした黒髪ショート、瞳の色も真っ黒で垂れ目に泣きぼくろがあり、周りの女子は色っぽい~って騒ぐ様な美形。見た目同様に善き王になるだろうと言う程の慈愛ある笑みに、心優しき相手なのだが、今、俺に向ける視線はそれを微塵にも感じさせない。
一方俺の見た目は髪の色は明るい赤、しかしつり目で無口なネクラ野郎と、黙った侭だと何を考えてるか解らない悪役っぽい顔らしい。そんな俺が周りから神宮司の友人には相応しくないやら、陰口を叩かれていたのは知っていたが神宮司はそれでも優しく普通に接してくれていた。
いや、もう接してくれてないが、禁固365年とか無茶苦茶言ってるし!
「何の反論もないんだな、水無月…。やっぱり、本当だったんだな…」
考え込んでいた俺の耳に、神宮司の悲痛な声が届く。いやいやいや!本当も何も、何の罪か解らずに反論のしようはないだろ!口を開こうとすれば周りから、やれ、話すな、反論何て言えない、事実だろうと聞こえて来る。
何だ、この茶番!
何の罪かも解らず、周りからは責められ、神宮司からも敵意を向けられ、今現在、人生お手上げ状態である。無言で見詰める俺に神宮司は唇を噛み締めてから背を向けた。
それを合図に周りの次期王になるであろう、神宮司直属のSPが俺を取り押さえる。
禁固365年と言い渡された俺、水無月大洋はこの日から独房へと入れられた。何の罪で、何で捕まったのかも解らずに。
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