第16話 月曜日のジュエリーショップ
再来週から大学が始まるある月曜日。
僕はリョータと2人で表参道にあるジュエリーショップに買い物に来ていた。
「なら今回は2人で祝うわけだ?」
「うん、前みたいにみんなでってのも考えたんだけどせっかく一緒に暮らし出したわけだしちょっとね」
「それもそうだな。つうか、アレだろ?お前プロポーズも兼ねて渡すつもりだろ?」
「え?いやぁまぁ・・・どうだろうね?」
男2人、ジュエリーショップでそんな話をしながらショーケースの中の指輪を見つめる。
「リョータはどんなのにするの?」
「う〜ん、悩みどころなんだよなぁ。杏奈はどちらかといえばゴツいのが好きなんだけど梓は控えめなのが好みなんだよなぁ」
「ははは、相変わらず贅沢な悩みだね」
「ははっホント、全くだ」
リョータはそう言って笑った。
来週は鈴羽の誕生日がある。
初めは杏奈ちゃんや梓ちゃんのときみたいにみんなでワイワイとって考えたんだけど今回は2人きりで祝うことにした。
僕としてもちょっと考えがあるしリョータや彼女達は来たがったが今回は遠慮してもらった。
「なぁ皐月」
「うん?何?」
「この国ってさ、一夫多妻制にはならないよなぁ?」
「なるわけないじゃん」
「・・・だよなぁ・・・」
リョータはショーケースに並ぶ指輪をじっと見つめながら幸せそうではあるがどこか悲しそうな顔をしていた。
あれこれと見て回り僕はシンプルだけどなぜか心惹かれる指輪を見つけそれを購入した。
店員さんが言うにはこの店のオーナーが探してきたデザイナーが作ったらしく今人気なのだそうだ。
記念日や名前を入れてもらうのに若干の日数がかかるので後日改めて取りに来ることにする。
リョータは結局悩んだ末に決まらずまた今度付き合ってくるよな、と言って帰っていった。
まだ少し肌寒い木漏れ日の中、僕はのんびりと歩いて2人の家へと帰る。
途中、いつものスーパーで買い物を済ませハイツの階段を上る。
「おっ、皐月っち。おかえりやで」
廊下ではまこっちゃんが電子レンジを抱えて部屋に入る途中だった。
「だいぶ揃った?」
「ぼちぼちやなぁ、こっちの電気屋はあんま値引いてくれへんから大変やわ」
「関西は値引いてくれるの?」
「当たり前やん、正味の値段なんかで買うたら大損するで?負けてもろてナンボやで」
後は冷蔵庫やなぁと言いながらまこっちゃんは部屋に電子レンジを置き階段を降りていった。
「ただいま〜」
「おかえり、鈴羽。今日もお疲れ様」
「ん〜〜ちゅっ」
仕事から帰ってきた鈴羽を玄関で出迎えてキスをする。
「今日も疲れたよ〜」
「毎日お疲れ様です」
冷えたコーヒーを鈴羽に渡して隣に座る。
「さ〜つ〜き〜く〜ん」
僕の胸に顔を押し当ててぐりぐりと抱きつく鈴羽を撫でてあげ鈴羽の香りを胸いっぱいに吸い込む。
「最近忙しいの?」
「うん、ほらこの時期って新卒の子とかが入ってくるじゃない?一応4月からなんだけど3月から研修に来てる子もいるから・・・」
「ああ、そっか、秘書室にも新しい子が?」
「2人ね〜いい子たちなんだけど、やっぱり疲れるよね」
鈴羽はそう言って大きく伸びをしてあくびをする。
「お風呂入ってるけどご飯の前に入る?」
「ん〜うん、そうする」
えへへ〜と甘える鈴羽と一緒にお風呂に入りに行く。
「部屋の割にはお風呂広いよね?」
「うん、なんでか知らないけど変に広いんだよね」
湯船に2人で浸かりお風呂を見渡してみる。
なんていうか無駄に広いお風呂だ。
「そのおかげでこうして2人で入れるわけだしいいんじゃない?」
「そうね〜」
鈴羽の髪を洗ってあげているとふにゃっした顔で抱きついてくる。
「んふふふ〜」
「泡、目に入るよ?」
「んふ、んふふふ〜」
髪が随分と伸びたので頭をアワアワにして鈴羽はお構いなしに僕に抱きつき頬ずりする。
「うふふふ〜あ、いたっ」
「ほら、だから言ったのに」
シャワーで泡を洗い落としてあげる。
鈴羽はギュッと目をつぶってなんとも言えない可愛い顔をしていた。
「今日も可愛いね、鈴羽は」
「ん?あん、不意打ちはダメ〜」
そう言いつつも抱きついたまま離れない鈴羽としばらくお風呂でイチャイチャと。
「一緒に入ると絶対にのぼせるよね?」
「うん、だって・・・仕方ないでしょ?」
「まぁ・・・仕方ないかな」
晩ご飯をつつきながらちょっと反省する僕と鈴羽。
反省はするけど一緒に入らないことにはならないから結局同じなんだけどね。
「そういえばベッド買いに行かない?」
「どうして?」
「2人で寝るとちょっと狭くない?」
元々僕が使っていたからシングルサイズより少し大きめだけどちょっと狭い。
「私は今のままでいいわよ」
「そう?」
「うん、だってちょっと狭いほうがひっついて寝れるでしょ?」
「あ、なるほどね」
晩ご飯を食べ終わりベランダで少し夜風に当たってから寝ることにする。
鈴羽は先ほど言っていたとおり僕に抱きついて眠る。
僕も鈴羽の感触を身体で感じながら鈴羽の香りに包まれて眠りについた。
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