第8話 火曜日の訪問者 1話目
夕陽がゆっくりと地平線に沈む頃、僕は部屋のリビングでのんびりとコーヒーを飲んでいた。
「ふわあぁぁ・・・眠い」
学校が午前中に終わったので、帰ってきてからリビングでうとうとしていたらすっかりこんな時間になってしまったのだ。
起きてから晩御飯の支度をして、鈴羽が来るのを待っている状態なのだ。
「今日は、炊き込みご飯だし、あんまり支度がないんだよなぁ、お吸い物でも作っておこうかな」
キッチンでちまちまと料理をしていると、チャイムの音が聞こえた。
「鈴羽、今日は結構早いんだなぁ」
僕はインターホンのところに行き、モニターを見て愕然とした。
「・・・母さん?なんで?」
「皐月さん?開けて頂けますか?」
「はっはい」
なんで母さんが?
ええ?さっぱりわからない。
「夏休み以来ですね。皐月さん。元気にしてましたか?」
「は、はい。母さん、急にどうしたんですか?連絡くらいくれたらいいのに」
「丁度こちらの近くで仕事がありましたから、寄ってみようかと。迷惑でしたか?」
「い、いえ。ちょっとびっくりしただけです」
母さんは、相変わらずの和服姿で、今日は紅色の鮮やかな着物を着ている。
「テレビの取材か何かですか?」
「ええ、その様なものです」
母さんをリビングに案内して、お茶を出しにキッチンへと急ぐ。
しかしなんでまた急に来たんだろ?
今までなら近くに来ても寄ってくるなんてことはなかったのに。
「どうぞ」
「ありがとう。頂きますね」
我が母ながら、やっぱりちょっと緊張すれのは何故なんだろうか。
「皐月さん。今日はあなたに聞きたいことがあります。この方をご存知ですか?」
そう言って母さんは一枚の写真をテーブルに置いた。
その写真には、今日撮られたであろう母さんと1人の男性が写っていた。
「あっ、この人はこないだの。確か・・・門崎さん?」
「そうです。門崎総一郎。門崎財閥の総帥であり、あなたがお付き合いしている方の会社の会長でもあります」
「えっ?鈴羽の会社の会長さん?」
「ええ、そうです。今日の取材は私と門崎との対談でしたので、そこであなたの話が出たのです」
「僕の話ですか?」
そういっても、こないだほんの二言三言話しただけなんだけど。
「いたく門崎が、あなたを気に入った様子でしたので少し気になったのです」
「そうはいっても、僕はちょっと話したくらいですよ。気に入られるようなことは何も」
何も思い当たらないし。
「そうですか。あれはあれで一代であれ程の企業を築いた人物です。人を見る目は確かなのでしょう」
母さんは、お茶を飲みひと息おいてから一言。
「皐月さん。あなた家に帰ってらっしゃい。そして次の宗家はあなたが継ぎなさい」
え?母さん?どういうこと?
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