第13話 お揃いの食器と火曜日

 6月も半ばにさしかかりすこしづつ暑さが増してくる。朝晩はまだ冷んやりとしており肌寒さも覚えるが、夏がそこまできているんだと実感させられる。


「皐月君〜、お茶碗これどうかな?こっちとどっちがいい?」

「う〜ん、こっちかなぁ、地味かな?」

 僕等は、駅地下にある雑貨屋で食器を選んでいる。鈴羽は、家に食事にきてから週3日くらい仕事帰りに寄ってくるようになった。

 さすがに泊まってはいかないけどね。


 で、いつまでもあり合わせの食器よりはお揃いのを買い揃えようということになり今に至るわけ。


「どうかなぁ、ならこれは?夏ぽくない?」


 なんだか新婚さんみたいで結構恥ずかしいものがあるんだけれど、鈴羽は楽しそうに食器を選んでいる。

 仕事中は、クールでビシッとした人なんだよな?全くイメージわかないや。


「大体揃ったかな?お茶碗にコップにお箸に・・・」

「うん、こんなもんじゃないかな、足りなかったらまた来ようよ」


 会計を済ませて、近くのス○バでお茶をしていて僕はふと思い出した。


「そういえば、僕の友達のリョータの話はしたっけ?」

「うん、心の友だっけ?」

 いや、違うからさ、それ。


「リョータが僕に彼女が出来たから、僻んでてね、誰か紹介しろってしつこくて」

「ふふっ、仲良しなんだね、リョータ君とは」

「腐れ縁だよ、まぁ仲はいいけどさ、でね、もしよかったら誰かいないかなって思ってね」

 僕がそう言うと鈴羽は少し考えて、

「う〜ん、どうかなぁ〜私の周りはお相手がいる人多いし・・・梓ちゃんか杏奈ちゃんくらいかな?」


「1度聞いてみてくれる?毎日絡まれるのも疲れるからね」

「そのわりには楽しそうだけど?一応聞いてみるね。」

「うん、ありがと」


 僕等は、その後駅地下をのんびりと歩いて家に帰った。当然鈴羽も一緒にね。



「こんなものかな?」

「いい感じじゃない」


 食器棚にお揃いの食器が2つづつ並んでるのを見て2人で顔を赤くして照れる。

 僕にぎゅっと抱きつく鈴羽が、いつも以上に可愛く見える。

 そっとキスをして、抱きしめる。


 時計の針の音が、カチカチと鳴る中僕等はしばらくの間抱き合っていた。




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