第4話 雨の日の水曜日〜SIDE九条鈴羽〜

「お疲れ様でした〜」

「はい、お疲れ様」


 5時ちょっとすぎ、定時で帰る秘書課の女子社員達が帰っていく。


 さてと私もそろそろ帰ろうかな。


 私、九条鈴羽は都内にある商社で会長秘書をしている。今年で入社7年目、28歳。


 毎週水曜日は、会長が休みなので、基本的に秘書課は定時あがり。いつもなら車で通勤なんだけど今日は電車で帰る。


 車で来てもいいのだけれど・・・水曜日は密かな楽しみがある日。

 今日も、あの子はいるだろうか?

 公園のベンチに毎週水曜日だけ、いるあの子。

 高校生か大学生くらいの男の子で、参考書を読んでいる。


 知り合いでもなければ、話したこともないのだけれどちょっと、何となく気になるあの子。


 会社から外に出るとお天気は生憎の雨模様。


 私は、傘をさして駅とは反対方向に歩き出す。


 自分では、気がつかなかったけど私の足どりは普段より軽やかだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る