君らしいまま

勝利だギューちゃん

第1話

ガタンゴトン


列車は走る。

ゆっくりと、のんびりと、走る。

都会では味わえない、田舎ならではの光景。


あわただしい都会では、この走り方は無理だろう。

逆に都会の、高速で走る列車は、田舎には合わない。


その土地に合った、走り方があるのだ。


とある駅で、僕は下りた。


「さてと、来ているはずだが・・・」

いない・・・


相変わらず時間にルーズな、女だ。


「誰が、ルーズですって?」

「小学生の時の、同級生の女だよ。

普段は几帳面なくせに、時間にだけは大雑把だ」

「その人は、どんな顔?」

「いつもツインテールで、二重で、眉毛が太くて、花が丸くて、

唇が薄くて、福耳で・・・」

「それは、こんな顔」

振り向く。


「うわー出た」

「何よ、人をオバケ見たいに。でも、そこまで覚えていてくれて嬉しい」

待ち人がそこにいた。


「やあ、久しぶり」

「ああ・・・久しぶり・・・」

顔も髪型も変わらない、小学生時代の同級生の女の子。


「君は、変わらないね」

「悪かったな」

「まあ、変わったら、君らしくないね」


再会したとたんに、昔に戻る。

幼馴染って、いいかもしれない。


「さあ、行こう。」

「うん」


女の子の家に着いた。

昔と、全く変わらない。


「お父さん、お母さん、連れてきたよ」

連れてきたったって・・・俺は犬か猫か・・・

まあ、らしいけど・・・


「やあ、ひさしぶりね」「大きくなったな」

その子のご両親が、でむかえてくれる。


あまり、変わらない。


「おじさん、おばさん、ご無沙汰しております。

父も母も、よろしくと申しておりました」

そういって、手土産を渡す。


「そんな堅苦しい挨拶はなし。前みたいにタメ口でいいよ」

礼儀を重んじたいのだが、そのお言葉に甘える事にした。


「おじさん、おばさん、お世話になるぜ」

コツン

「いたー」

頭をはたかれた。


「限度を知れ」

女の子に言われた。

「ごもっとも」


「じゃあ、私の部屋に行こうか」

「うん」

久しぶりに、この子の部屋に入った。


変わらん・・・

ていうか、ぬいぐるみが増えている・・・


「かわいでしよ?」

「ああ、女の子の部屋みたいだ」

「女の子だよ」

突っ込まれた。

ここも、変わらない。


「ねえ、久しぶりにやる?」

「もちろん」


昔は、よく紙飛行機を作って、窓からふたりで飛ばした。

とても、懐かしい思い出だ・・・


「出来た?」

「OK」

「じゃあ、行くよ。レディーゴー」


ふたりで窓から、紙飛行機を飛ばす。

いつまでも、飛び続けてほしい。


ふたつの紙飛行機は、よりそっているように見えた。

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君らしいまま 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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