魔女と熱烈ファン2
翌日も、その翌日も、ところ構わずアンはウォルタの前に姿を現し続けた。
そして、一週間が過ぎたある日。
「お帰りなさいませ、ウォルタ様」
自宅に帰ったウォルタとフレイの二人を、アンは笑顔で迎え入れた。
「うわぁ!! なんで私の家にあなたがいるのよ! どっから入ったの!?」
ウォルタは絶叫した。
「それは……秘密です! それより、お昼食の支度ができてますわ。腕によりをかけて作りましたの。今日は外で何も食べてきてないはずですわよね?」
アンはそういうと、テーブルの上のごちそうを手のひらで指した。
「なんで、あなたがそのこと知ってるのよ! フレイ! 今すぐにこの子を外につまみ出して!」
「ま、まあまあ。何も食ってないのは事実だし、ありがたく頂こうよ」
そ言うと、フレイはテーブルの上のごちそうに手を伸ばした。
しかし、その手はアンによって止められた。
「ダメですわ。このお料理はあくまで、ウォルタ様のために作ったものですから」
「えー、なんだよケチだなぁ」
そのやりとりを見ていたウォルタの怒りはとうとう爆発した。
「アン! あなた、ちょっとそこに座りなさい!!」
そのあまりの気迫に、アンは思わずその場に座り込んだ。
ついでにフレイも。
「あなたは私のファンだなんて言っているけど、明らかに行動が異常だわ! いったい何が目的なの!?」
ウォルタはアンに顔を近づけ、問い詰めた。
「……別に、他に目的はありませんわ。わたくしはただただ一途なウォルタ様のファンですわ」
アンはウォルタの目をまっすぐ見てそう答えた。
「……気になってたんだけど。あなた以前、ザワの森に変な箱を置いたりしなかった?」
「箱……ええ、木の実の場所を記した地図を入れて、そばに置きましたわ。恥ずかしながら、あのときのわたしくしは、まだウォルタ様に話しかける勇気が出なくて……せめてお仕事の力になれたらな、と思いまして」
アンは照れながらそう答えた。
「あの時の地図! あれ、アンのおかげだったのか。ありがとなアン!」
フレイはそういうとアンに握手を求めた。
しかし、アンはそれを無視した。
「あなたのためじゃありませんわ。わたしくしはあくまでウォルタ様のために……」
「あー、もう分かったわ」
アンの言葉を遮り、ウォルタは言った。
「あのときの地図はありがとう。とても助かったわ。でも、私に対するあなたの行動は行き過ぎよ」
「ウォルタ様……ごめんなさい」
ここで初めてアンは反省の色を見せた。
「はぁ……でもまあ、せっかく私のファンになってくれたのだから、お礼になんか一つお願い事を聞いてあげるわ」
「お、お願い!?」
アンは顔を上げて、目を輝かせた。
「ええ。その代わり、そのお願いを叶えたら今後、私に付きまとうのは控えること。いい?」
「はい、ですわ!」
アンは笑顔で返事をした。
「よろしい。なら、あなたのお願いを聞こうじゃないの」
「はい! わたくし、ウォルタ様のお仕事にご一緒して、目の前でその活躍を拝見したいですわ!」
予想外の返答にウォルタは即座に頭を抱えた。
「いいじゃん! 明日の仕事、連れてってやろうよ!」
フレイは笑顔でウォルタに提案した。
「……もう、特別よ」
ウォルタは渋々そう答えた。
そして、三人はアンのごちそうでお腹を満たした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます