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そのことから浮かび上がるのは、小嶋尊への疑惑だった。
「野神先生は生き霊になってまでその鍵を探していたんだなあ……。とりあえず俺たちでその鍵を探すってのはどう?」
梢と理恩の少し先を歩く大森が振り向きそう言った。
「まさに事件を解く鍵ってわけですね!」
佐野はミステリーが好きなのだろうか。
明らかにテンションが上がっているのがわかる。
「でも危険じゃないかな……。だって鍵を探していることが犯人に知れたら……」
「それは大丈夫なんじゃないですかね。神楽坂先輩。だって犯人は小嶋尊が濃厚じゃないですか」
「佐野の言う通りかも。彼は引きこもっているから知られることはないはず」
「ああ、そう言えば野神先生は小嶋尊が引きこもっていることは知らないのかな?」
大森たちは野神沙耶香から鍵を受け取ったのは――彼女を殺したのは小嶋尊だと思っているようだ。
「じゃあ鍵を探すのは先輩たちにお任せしますよ。俺たちは小嶋尊に会ってきます」
「え!」
「なんだ。怖気ついたのか? 小嶋尊は生きてるぞ?」
いつものように小馬鹿にされ、梢はムッと唇を尖らせた。
「こ、怖いとかそんなんじゃないから」
「犯人じゃないって言いながら、おまえも疑ってるのか?」
「……宝生くんは違うと思ってるの?」
「さあな。まだ何にもわかんねえよ。だから話聞きに行くんだろ。早速、小嶋周に家に招待するように約束とりつけろ」
「ハードルが高い! それに連絡先知らないんだから月曜日になるわよ……ん?」
そこで梢は小首を傾げた。
脳裏に爽やかに笑う周の姿が再生され、記憶が甦ると共に梢の顔からみるみるうちに血の気が引いていった。
「今日何曜日!」
梢は理恩の肩を右手でガシッと掴んで睨みつけた。
「土曜日だけど?」
「バスケの試合!」
「ああ、そういやなんか約束してたな」
「言ってよ!」
「知らんがな」
「あああ! 今何時!」
「自分で見ろよ」
それもそうだとスマホを確認すると午後4時を過ぎたところだった。ここへ来たのが3時過ぎだったのだから当然だろう。
「お、終わってる……」
「残念だったな」
ニヤリと笑う理恩に梢は思った以上に自分が落胆していることに気がついた。
その事に羞恥を覚え、今度は顔を赤くした。
「なになに? 小比類巻さん、まさか本当に小嶋くんのこと……」
話を聞いていた佐野が話に割り込んできた。
「ちっ、ちがっ! 約束を忘れてたから焦ってるだけですから!」
「小比類巻さんって初対面のイメージと違って可愛い人よね。面白いし。お高くとまった美少女じゃなくてよかったわ」
「や、やめてください! 神楽坂先輩までからかわないでくださいよ!」
「よし、小比類巻さんも今日からメガネをかけよう。部長命令だ」
「どうしてそうなるんですか!」
梢の声が閑静な住宅街に響いた。
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