死神は世界を壊さない
黒幕
第1話 裏サイド 死神Ⅰ
東京都心、表通りは電光が辺りを眩しいくらいに照らしている。
しかし、そんな所でも一歩路地に入れば表を照らしているような明るさは無く人気もない。
そんな薄暗い路地裏の奥で二人と一体がいた。
一体と言う表現の仕方は何も間違っていない。なぜならその一体―――地面に倒れ伏している少女は既にこと切れていた。
十代後半位だろうか、ブロンドの艶髪に整った顔。最早生気はなく瞳孔が虚ろに開いたままの青い宝石の様な瞳。
そんな美しい少女の四肢と首は滑らかな断面をさらしながら胴から切断されて、自らが流した赤黒い血溜まりに沈んでいる。
こと切れた少女を挟んで二人がいた。
三十代半ばの男が、目の前で起こった事が理解出来ずに腰を抜かしていた。
しかしその目には目の前に立つ人物を恐怖と絶望を孕んだ目で見ている。
それもそうだ、目の前に立つ人物が一瞬にしてこの状況を作り出したのだ。
その人物は背格好からして男だとわかる。
その男は、足首まで長さのある黒いマントを着ていた。フードを目深くかぶっており、マント自体古い物なのかマントの端はボロボロになっている。
顔には、耳まで口が裂け牙が均等に並び目の部分だけ細い楕円形の穴が開いている不気味な白い仮面を被っている。
まるで御伽話に出てくるような死神の様な恰好をしていた。
「さて」
「ひぃっ!?」
死神男はゆっくりともう一人の男に近づく。
怯えた男は逃げようとするが力が入らず立つ事さえできなかった。
死神の様な男は男の前まで来るとマントの前を分け右手を出した。
一瞬マントの中が見える。黒いブーツにズボン、黒いコートを着ており伸ばす手には黒い皮手袋を身に着けている。その上その腕には鈍く黒く光る籠手をはめている。黒い籠手は肘から指先まで覆っており指先には、人の爪を鋭く伸ばしたような意匠が施されていた。
その手は怯える男の首を掴み、軽々と持ち上げる。
「ぐあっ!?はっ離せ!?」
持ち上げられた男は必死にもがくが死神の手はびくともしない。
死神男その姿を血の様な赤い瞳でただ見る。
「はあ、精霊なんぞにかかわらなければお前は日の元で生きられたというのに」
持ち上げられた男は思い出したように、目の前の存在に怯えながらも怒りを表す。
「どうしてッどうして彼女を殺したぁッ!!あの子には何の罪も無いだろうッ!!それなのにどうして!!」
男は目の前の死神男を睨みながら声を荒げた。
その様子に動じることも無くただ淡々と一言質問に答えを返した。
「それが俺の使命だからだ。他意はない。精霊とそれにかかわる者を殺す、ただそれだけだ」
「まっまさかお前、噂のグリムリ―――――――――」
男はその時何か思い出したように言いかける。
そして言葉が男が言った最後の言葉だった。
―――――――――――――
そこには二つの死体が転がっていた。
「さて、帰るか」
そう言って死神男は指を鳴らすと二つの死体は音もなく消え、べっとりとこびりついていた血糊も消失していた。
まるで先程の事が幻だったかのように何もかも消えていた。
それを確認すると死神男―――――
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