New Real World

白鳥一二五

プロローグ

現実なんて関係ない……


友人なんて必要ない……


アタマの中にだけ、世界は存在しているのだから……


……


…………


……


それは、些細な気づきからだった……


幼い頃からこの年齢になるまで、俺は気が付くと一人になっている事が多かった……


イジメられたとか喧嘩したとか、なにか問題があったわけではない。


ただ、本当に気が付くと――社会と円滑に付き合っているにも関わらず、気が付くと人の輪から外れている。


あの日も、そうだった……


いつの頃だったか俺は一人で家出をしたことがあった。行き着いた先はどこかわからない田舎の農村地帯。


テストの点数や勉強や体育の成績など、一定のカテゴリに括られてばかりの現実から逃げ出した俺は、なにもないこの場所がひどく心地よく感じた。


一面に広がる青い田んぼ、聳え立つ山々、透き通った風と清らかな水。


辛うじて人の文明の一端である事を主張する合掌造りさえも、コンクリートに固められた世界に過ごしていた俺にはあまりに非現実的である。


本当に、心地が良かった。


広大な自然に包まれ、自分があまりにちっぽけで――それでいて、誰も俺の存在を知る者はいない。


世界から消えてしまったような感覚……


帰ろうにも帰る道がわからない……いっそのこと、このまま消えてしまった方がいいのかも知れない。


ぼんやりと考えを巡らせていたその時、非現実的な田舎の景色の中に立ち尽くす俺の前を、赤いワンピースがひらりとはためいた。


綺麗な女の人だった……生命の力強さを感じさせる赤に白いドットのワンピース。


麦わら帽子の下から伸びる黒い髪が風になびいて、少しだけ汗ばんだきめ細やかなうなじがチラリと覗く。


突如として猛烈な暑さに身を焦がされ、体が焼け付いて動かなくなる。


ただただ、当時の俺より年上の少女の、幻想的な出で立ち――この世の者でないような不思議な魅力に惹かれるばかり……


だから俺は、本当にこの世界にいられないと思ったんだ……

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