第36話 セシリアーナへの手紙

 セシル姉さまお元気ですか。

 シルヴェーヌです。私は今、お父様、モーガン・ボレリ様のお屋敷で元気に暮らしています。お部屋はリリアーヌお姉さまとローゼちゃんと三人一緒です。もう、毎日が賑やかで楽しくて仕方ありません。


 学校にも通っているんですよ。

 前に行った士官学校ではなくて、国立の高等女学校ですけど。女学校なので殿方は一人もいません。もちろん、先生方も職員の方も全員女性なのです。極端ですよね。だから以前、お姉さまがお話して下さった〝デート〟なども無縁です。


 姉さまだけ殿方とデートして、しかも直ぐに結婚しちゃうんだから、もう私は嫉妬の塊になってしまいそうです。


 嘘です。

 

 姉さまの幸せそうなお顔を思い出すたびに私も幸せな気分になります。レグルス・ブラッド少佐はどうですか? 優しくしてくれますか? 私はちょっとおっかなくて。だって、彼のお顔は獅子そのものだし、体だって大きすぎて、ちょっと怖かったな。


 お邪魔します。

 リリアーヌです。


 私を助けてくれたお姉さまには感謝の言葉しかありません。もう、ありがとうって百回、いや一万回でも言いたい位です。姉さまが嫁いでしまったので、今、私がシルヴェーヌの面倒を見ています。あの子、案外臆病だから、色々からかうのが楽しいんだよね。え? 泣かしてないです。大丈夫です。だってシルヴェーヌは私の可愛い可愛い妹なんだから。


ろーちゃんです

じをかくのがむずかしくて

でもがんばってかいてます

じはしるちゃんにおしえてもらってます

りりちゃんはちょっとせっかちでざつなのです

じのせんせいにはむいてないとおもいます


しるちゃんはやさしくてだいすきです

りりちゃんはおもしろくてだいすきです

そしてわたしのおねがいをきいてくれたせるちゃんはもっとだいすきです

にんげんのすがたにもどれるなんてまだしんじられません

せるちゃんありがとう

いっぱいいっぱいかんしゃしています


 シルヴェーヌです。何だかリリア姉さまが乱入してきて、ローちゃんまで沢山書いちゃって、ごちゃごちゃになりました。ごめんなさい。

 セシル姉さま。ご結婚、おめでとうございます。金属製の体だった姉さまが、元の人間のお姿に戻っていたのは本当にびっくり仰天してしまいました。もちろん、リリア姉さまもローちゃんも元の姿に戻ったのも嬉しいです。これからもお元気で。子供ができたら教えてくださいね。


だいすきなセシルお姉さまへ。

シルヴェーヌより。

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