第3話 就職




 ――今日から、ここがお前の部屋だ。



 その言葉と共に案内された部屋は、何というか……狭かった。端的に表すのであれば、物置部屋という言葉を分かり易く表現した内装であった。


 広さは、畳四畳ぐらいだろうか。申し訳ない程度に敷かれたカーペットは所々汚れていて、(幸いにも)窓は無い。明かりは天上に付けられた照明が一つで、換気扇が壁の隅にひっそりと取り付けられているのが目に映った。



 ……これが、仮にも女(というには、些か無理があるのかもしれないが)を住まわせる部屋か、こいつ……。



 ガリガリと頭を掻きながら、私は内心ため息を吐いた。



(住む人の為というよりは、湿気でカビが生えないようにするためのモノ……だろうな)



 片隅に設置されたコンセントの差込口が、せめてもの救いか。しかし、あるのはそれだけで、トイレはもちろん、テレビのような家電は一切ない。毛布すら無いからか、妙な寒々しさを覚えてならなかった。


 ……いくら私の方に非があるとはいえ、だ。これで私が普通の女子であったなら、さすがに不満の一つは出ているところだろう。これなら、何時取り壊しされてもおかしくないあの家の方が、まだマシなのでは……。



「トイレは隣だよ。男女共同だから、男が入って来ても騒ぐんじゃないよ」



 後ろからのママの声に、私は部屋の外へ首を出す。言われた場所に、トイレのマークの張り紙が貼ってあった。その奥には階段があり、その上からは小さくはあるが、スナックからの喧騒が聞こえて来ていた……と。



(誰か、昇ってくる)



 伝わって来る音に意識を向ける。「――どうしたんだい?」動きを止めた私を見て、首を傾げたママが私の視線を追い掛け……にゅう、と姿を見せた白い塊に、鋭い眼光を和らげたママが気さくに声を掛けた。



「意外と早かったじゃないかい」



 駆け寄るママの背中を横目にしながら、私は……呆然と目を瞬かせるしかなかった。それぐらい、目の前の光景は異様だった。



 塊だと思ったのは、真っ白な布団一式。布団が動いたように見えたのは、その布団を抱えたパンチパーマの男が身じろぎしたから。数秒掛けて、私は目の前の光景が、『布団を抱えたヤクザ』であることを理解した。


 そいつは、一目で裏稼業の人間だと分かる雰囲気を漂わせた男であった。頬に痛々しく残った傷痕に、がっちりとした体格。高そうなスーツと、見るだけで震え上がってしまう鋭い眼光。


 今まで遠くからしか眺めたことがない、本物の極道。自分とは住む世界の違う、ある種のファンタジーを前に……私は、すっかり呑まれてしまっている己を自覚した。



(か、覚悟はしていたが、改めて直面すると、すげえ怖ぇ……)



 遠目からは想像も出来なかった、生の迫力。鬼になっただけの己では到底出すことのできない、凄み。これが本物というやつなのだろうか……遠くから眺める分には平気だったのに……!


 第一人称で相手をビビらせるのも、一種の才能だ。昔どこかで小耳に挟んだその言葉が、ふっと脳裏に浮かんだ……それが真実であることを、私は今、この場で身を持って理解した。



「――これ、どこに置いときましょう?」



 ポツリと響いたその声に、私の肩が跳ねた。



(この極道、喋ったぞ!? 生の極道の声だ!)



 始めて体感するそれに、私は思わず口に手を当てて声を押さえ……よくよく冷静になって考えたら阿呆でしかないのだが、そんな私の動揺を他所に、「ここだよ」ママは私が寝泊まりする部屋を指差した。


 それを見て、男は疲れた様子を微塵も見せずに布団をそこへ運ぶ。「ご苦労さん、悪いね、ひとっ走りさせちゃって」そして、掛けられたママの労りの言葉に男はため息を吐くと、「これぐらい、お安い御用だ」笑みを浮かべて私たちへと向き直り……私へと視線を向けた。



 ――瞬間、私は思わずママの背中に隠れてしまった。情けないとか考える間もない己の反射的な行動。「――大した鬼娘だこと」そう苦笑交じりに告げられたママの一言に、私はようやく己が取った行動を理解した。



(……だ、だって、めちゃくちゃ怖ぇんだもの! 鬼とかそんなの考えるよりも前に、こんなの前にしてみろ! 誰だって逃げるぞ!)



 ――こみ上げてくる羞恥心と情けなさに、誰に言うでも無く私は己に言い訳をした。それがさらに情けなさを引き立たせてしまっていることが分かってしまう己の賢しさに、私は今すぐこの場を逃げ出したくなった。



「ほれ、挨拶をしな。いちおうはお前さんの先輩に当たる人だよ」

「ちょ――」



 けれども、逃げる前に私はママに背中を押されて、男の前に立たされてしまった。



「えっ……と……」

「…………」



 そうなれば、私と男の間を遮る者は何も無く……私は、真正面から男の眼光を受け止めるしかなかった。



(ひぇぇ……なんの罰ゲームだよ……)



 無言のままに、見下ろされる。ただそれだけなのに、足が震えそうになる。『鬼』という無双ボディであっても、所詮、中身は小心などこにでもいる男でしかない。それを、真っ向から叩きつけられた気分だった。



「え、えっと……」



 それでも、『鬼ボディ』という圧倒的なアドバンテージが、私の心を奮い立たせてくれる。真っ白になった思考の中で、私はたっぷり一分程掛けて……挨拶の言葉を絞り出した。



「縁あって、ここで働くことになりました……よろしくお願いします」



 ――瞬間、ごつん、と脳天から衝撃が走った。思わず振り返ると、「――な、なんて石頭してんだい」そこには痛そうに手を振っているママの姿があった。



「あんた、それで挨拶のつもりかい?」

「えっ?」



 意味が分からずに首を傾げると、ママは「全く、最近の子は本当に礼儀も知らないんだねえ」呆れたと言わんばかりにため息を吐いた。



「名前も名乗らないで、よろしくお願いしますも無いだろう。それは逆に失礼ってもんさ」

「あっ――」



 慌てて振り返る。笑みを零している男と目が合った。「姐さん、別に俺は気にしませんぜ。この子だって、緊張していたんだし……」それどころか、そうフォローされてしまった私は、もう言い訳すら考えられなかった。



「いきなり極道を前にして、挨拶出来るやつの方が稀だ。むしろ、アレでも上出来な方じゃないですかい?」



 や、止めてくれ。そういうフォローは死にたくなる。



 その言葉が出そうになったが、私は辛うじてそれを喉元で呑み込んだ。



「相変わらず、銀二は女子供には甘いねえ」

「いや、俺はそういうつもりじゃ……」

「だけど、それはソレ、これはコレだよ」



 けれども、そんな男のフォロー……いや、銀二のフォローも、ママの前では無意味だった。



「ここで働いて貰う以上、そういう最低限の礼儀はしっかり覚えてもらわないとね……ほら、分かったならやり直しだよ」



 ばん、と背中を叩かれて前に出る。改めて直面する男の視線を前にして、私はなけなしの意地を奮い立たせ、自分の名前を告げた……のだが。



「……あんた、ふざけているのかい?」

「えっ!?」



 何故か、ママの不評を買ってしまったようで、不機嫌を露わにして私を睨んでいた。見れば、銀二も困ったように苦笑していた……な、何故?



 訳が分からずに混乱するばかりの私を見て、「……はあ、いいよ、もう」ママは色々と諦めたようにため息を吐く。次いで、思い出したように時計を見たかと思ったら、「おや、もうこんな時間かい」幾分か慌てたように顔をあげた。



「今日はもういいから、お前はもう休みな。服とかその他諸々は、また明日にしよう……必要な物があったら、ここを出て右手に行ったところにコンビニがあるから」

「え、あ、うん、ありがとう……」



 差し出された二枚の札を受け取りながら、とりあえず頭を下げる。「まあ、素直にお礼が言えるだけマシか」ママはそう言ってもう一度ため息を吐くと、慌ただしく階段へと駆けて行った。



「――そうだ、一つお前さんに聞いていなかったね」



 と、思ったら、踵をひるがえして戻って来た。今度は何だろうかと首を傾げていると、ママはしばし私の全身を見回し、次いで意味ありげに銀二を見やった。



「……それじゃあ、俺はこの辺で」

「後で、とっておきを一杯奢るからね」



 すると、何かを察したのか。銀二は特にその視線の意味を尋ねることなく、さっさとスナックへと戻って行った。正直、少し気が楽になったのは秘密である。


 しかし、今の意味深な間は何だったのだろうか。なおも見つめてくるママの視線に居心地の悪さを覚えていると、「あのさ――」ポツリとママが唇を開いた。



「お前さん、前にアレが来たのは何時だい?」

「……アレ?」



 アレ、とは、何のことだろうか。意味が分からずに首を傾げると、ママは「まあ、改めて聞くこともないか」軽く頬を掻いて、新たな紙幣を一枚私に手渡した……何故?



「万が一急に来たとしても、それだけあれば痛み止めも一緒に買えるだろ。足りなくなったら遠慮せず言いなよ」

「えっ?」



 痛み止め?



「前にもあったんだよ。雇ったその日に来ちゃって、そのまま貧血起こして倒れちゃったことがね」

「え、貧血? 倒れた?」



 本当に何を言っているのかが分からない。けれども、ママはそう取らなかったようだ。真面目に困惑している私を他所に、「言っておくが、逃げたらタダじゃおかないよ」そう一方的に釘を刺すと、足早にスナックへと向かって行ってしまった。


 ……一人、意図を呑み込めぬまま残された私。トイレから聞こえる空調音と、蛍光灯のジーという発光音。そして、階上から聞こえてくるスナックの喧騒が、妙に私の耳に残った。



「痛み止めって、何のことだ?」



 両手に持った札(計3000円)に視線を落とし、次いで階段向こうを見やり、最後に己が自室となった物置部屋へと振り返る。



「……酒を買いに行くか」



 とりあえず、必要な物は買っておけとの御指示だ。絶えず湧き上がってくるこの欲求を静める為に、速やかにコンビニへと向かうとしよう。


 諸々のことを考えるのが面倒になった私は、ひとまず気持ちを切り替えて階段を下りて行くことにした。



 ……。


 ……。


 …………。


「安心しろ、こう見えて私は20歳を超えてるか――」

「身分証を掲示してください」

「……すみません、出直してきます」


 しかし、結局目的の物が買えないまま、私はすごすごと部屋へと戻り、翌日までふて寝せざるを得なかった。






 そして、翌日。


 日もすっかり暮れて、あれほど煩わしかった明るさが夜の帳の中へ消えた頃。「いつまで寝ているんだい?」ママの呆れを含んだ有り難いお声に、私はむくりと布団の中から身体を起こした。


 しばしの間、特にすることも無く部屋の中を見回す。別に寝ぼけている訳では無かったが、何となく今の状況が夢ではないのかということを確認したかった……やっぱり、夢じゃなかった。



(……極道が通うスナックで働く……か。俺も、落ちぶれたもんだな)



 一般的男性から人外鬼娘になって、ホームレスから放浪の日々。そして、今はヤクザが贔屓にしているスナックの仮店員。まさか、自分からは最も遠いであろうと思っていたヤクザの世界に身を落とす日が来ようとは……な。


 経緯はどうあれ、だ。一宿させて貰ったうえで失礼なことなのかもしれないが、それが私の正直な気持ちであった。


 こみ上げてきたよく分からない感情が、ため息と共に外に出る。「おやまあ、疲れた顔をしているね」見咎めたママからクレームが上がったので、私はさっさと布団を畳んだ。



「よく眠れたかい?」

「眠れた顔に見えるか?」

「いやあ、見えないね。後、いいかげんそのカラーコンタクトは外しな。流行っているのか知らないけど、その内失明しても知らないよ」



 失明、と言われて、目の周りに手を当てて、ああ、と納得する。そういえば、この身体の瞳の色は確か、血のような赤色だったか。



「まあ、潰れたら潰れたで自業自得だからいいけどね」



 け、けっこうドライ……と、絶句している私を他所に、昨日に続いて再び私の全身を見回したママは、「ところで――」室内を見回してから私に尋ねてきた。



「昨日は聞いていなかったが、お前さん、財布とかバッグとか、私物は持っていないのかい?」

「そんなもん無いよ」

「駅前のロッカーとか、友達の家とかにもかい?」

「無い」

「それじゃあ、本当に着の身着のままなのかい?」

「見ての通り、これ一枚だ」



 ボロボロになったジャージの袖を引っ張って見せる。それを見たママは、「怖いモノ知らずって、怖いねえ……」心底呆れたと言わんばかりにため息を吐いた。


 まあ、仕方ないだろうなあ、と私自身思っていたので、特にその事には何も言わなかった。いくら汗等で汚れないとはいえ、所詮、服は服。数か月も着っぱなしでいたせいか、あちこちが解れて破けている……うん、言われても仕方がない。


 私自身、さすがにもう限界だろうと分かっている。けれども、着替えが無いのだから仕方がない。あの時は服を買わず仕舞いだったし、辛うじて持ち出せた金も、結局は自販機の酒代に消えてしまった……うん、これも仕方がないことだ。



「何をさせるにしても、まずは服だね」



 そう言うと、ママは懐から取り出した財布を開き……ふと、その手を止めた。



「……そういえばお前さん、最後に風呂に入ったのは何時だい?」

「三ヶ月以上前かな」



 瞬間、ママと私の間に一歩分の距離が生まれた。いや、気持ちは分かるけど、そこまで露骨にされるとちょっと堪える。



「……それにしちゃあ、お前さん、臭わないね」

「鬼は汗を掻かないからな」

「その設定、まだ続いていたのかい?」

「設定言うな」



 強く主張するが、「はいはい、そういうことにしておいてあげるよ」一笑された。「後、昨日の残金はいくら?」次いでそう言われたので、私は素直に昨日の札をそのまま見せた。

「おや、お前さん、何も買わなかったのかい? 馬鹿な子だねえ、どうせ必要になるだろうに」



 そしたら、何故か驚かれた……あ、そうか。



「言っただろ、鬼は酒さえあればいいんだ」



 ママが抱いたであろう疑問に答える。しかし、ママは「お馬鹿、違うよ」苦笑して首を横に振った。



「ナプキンと下着ぐらいは買っておけってことさ。知らないのかい? 最近はコンビニでも置いているところ、多いんだよ」

「え?」



 ナプ……キン。え、それって……生理用品?



「え、じゃなくて、ナプキンだよ。その様子だと軽いんだろうけど、いざと言う時無いと困るだろう? それとも、タンポン派かい?」



 え、いや、困るだろうって言われても。



 意図が分からずに首を傾げると、ママの視線が訝しみ色が混じり……「――ちょ、お前さん――」そして、驚きに大きく見開かれた。



「まさか、まだ来ていないのかい!?」



 鬼気迫る形相で私の肩を掴んだママは、そのままの勢いでグイングインと揺らしてきた。



「な、何が?」



 何を急に焦り出したのか。意味が分からずに目を白黒させていると、ついにママがキレた。



「とぼけるんじゃない! 生理だよ、せ・い・り!」

「――あっ」



 そう言われた瞬間、私は頭の中でガションとパズルが噛み合ったのを実感した。昨日から何度か尋ねられた、『来た』や、『貧血』の言葉の意味。それを、私は今更ながら……本当に今更ながら、ようやく理解した。



(……鬼って、月経とかあるのだろうか?)



 理解したが、それだけだった。なにせ、この身体は人間ではなく、れっきとした『鬼』のソレだ。あの手紙には書いていなかったが、その年齢はおそらく数百年に達していることだろう。


 鬼の寿命が(寿命があるのかどうかも知らないが)如何ほどかは知らない。だが、それだけ長く生きているのだから、少なくとも一度ぐらいは来ている……のだろうか。


 だがしかし、私が今の私になってからは一度として無いが、もしかしたら……いや、待てよ……。



「――お前さん、歳は幾つ?」



 どう答えていいか分からずに悶々と頭を悩ませていると、ママの方が先に痺れを切らしたようだった。見上げれば、昨日の男……銀二よりも迫力のある眼光と目が合った。



「い、いちおう、三十は超えています」

「さんじゅうぅぅぅ~~!!」



 ズイッと顔を近づけられる。思わずビビっている私を見て、ママは舌打ちと共に私の肩から手を離すと。



「脱ぎな」



 一言、そう告げた。あまりに突然のことに、えっ、と呆けた私であったが、鋭くなったママの眼光に気づき、慌てて着ている全てを脱ぎ捨てる。ものの数秒程で、私は生まれたまま(厳密には違う)の姿をママに晒した。


 途端、ママは無言のままに屈むと、その顔をちゅうちょなく私の股間に近づけた。「動くな!」いくら何でも恥ずかしくて腰を引いたが、無理やり引き戻されてしまった……いったい、何のプレイだ?



「……正直に答えな。お前さん、これは剃っているのかい?」

「え、いや、自前だけど……」

「つまり、まだ生えていないわけだね?」

「そ、そうなるな……それが何か?」



 何だか訳が分からないことが続いている気がする。今のこの状況にそう思っていると、ママはため息を……それはそれは大きなため息を吐くと、静かに立ち上がって……ジッと、私の目を見つめてきた。



「念のため聞いておくけど、中学は卒業しているだろうね?」



 ……?



「嘘偽り無く、中学は卒業しているかと聞いているんだ。どうなんだい? 卒業しているのかい? していないのかい?」

「……はあ、まあ、中学はとっくに卒業したけど……?」



 意図が分からないながらもそう答えると、ママはまた大きなため息を吐いた。それだけでなく、その場にだらしなく腰を下ろすと、疲れ切ったように肩を落としてしまった。



「はあぁぁ……良かった。さすがに中学生はアウトだよ」



 何なのだろうか、いったい。とりあえず上だけでもと脱いだやつを羽織ると、ママは「まあ、ここいらの暗黙のルールみたいなもんさ。昔なら考えもしなかったことだけどね」苦笑しながらも話してくれた。



「一種の年齢制限みたいなもんさ。いくら裏稼業、その中でも雑用をやらせるって言ったって、中学も卒業していない子供を使う気はないんだ」

「16歳だか18歳以上じゃないと駄目とか、そういうやつ?」



 昔、クラスメイトの一人が16でバイトを始めたのを思い出した。



「あんなの、この世界じゃあ名ばかりさ。いくらでも誤魔化しようがあるし、そういうことして金稼いでいる子の中には、初潮も来ていない小学生もいるぐらいだ」



 もっとも、そういうことをする組のやつは、どこの組からも爪弾きされているけどね。


 そう聞こえないように呟いたであろう、ママの唇。しかし、鬼の聴覚はそれをはっきりと聞き取った……が、私はあえて聞かないフリをした。



「言ってしまえば、こういう世界だけのルールってやつさ。まあ、今の子は化粧で幾らでも年齢を誤魔化すとはいえ、それを抜きにしても……最低限、高校生ぐらいが限度かね」



 そう言うと、ママは身体を起こした。次いで、私の全身を見回すと……「さすがにそれじゃあ、ドレスなんて着せられないね」これまでとは別の意味で苦笑した。



 そう、私には見えた。



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