アウターパーク
鮪糸(つないと)
第1話 接触
調査報告1
第3離島のラッキービーストより入電。
アニマルガール同士の闘争が激化しており、これ以上は対処しきれないため調査員の増援を派遣してほしい、とのこと。
他に調査員がいないため、単独での調査を決行。
5月23日 10時37分
記録者 高田リセ No.1-230ABK
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「あの島ね」
潮の香りはどうも苦手だった。まして船だなんて。今目的の島を見つけられなかったらきっと酔いが限界に達して戻していた。
(あれは・・・?)
砂浜に何かが横たわっている。人のようだ。
船をできる限り浜に寄せ、大きな岩に固定してからそれに駆け寄った。
「大丈夫?聞こえますか?」
女性だ。服装は自分のものと一緒だった。しかし、彼女はラッキービーストを抱えたままピクリともせず、目もうつろだった。
おそらく、最後の力を振り絞って通信したのだろう。
入電があってからすぐに出発したつもりだったが、迷ったせいか、空は赤みがかっていた。仕方なく、砂浜にテントを張って休むことにした。
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調査報告2
17時07分、第3離島現着。
昏睡状態の現地調査員を発見。
現地のラッキービーストによると、彼女が最後のスタッフとのこと。
また、不可解なことにネットワーク中のこの島に関する資料や記述は1件も見つからなかった。
スタッフ不在のため、アニマルガールと接触し、調査を続行する。
5月23日 20時48分
記録者 高田リセ No.1-230ABK
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第3離島は典型的な火山島だ。火山を森や草原が囲んでいる。
リセは朝早くにテントを飛び出し、森へ入っていた。
(この辺はパーク内の他の施設でもよく見るふつうの森なんだけどな・・・)
植物のサンプルや写真などを集めながら歩いていると、
「おい!お前!こっちだ!」
「!?」
腕をつかまれ、強引に木の陰へ引っ張られる。
「なんぐぅ・・・」
問いただそうとしたが口をふさがれる。すると、先ほどまでいた場所を一人のアニマルガールが通り過ぎていく。
(あれ・・・あの左手・・・)
先ほどのアニマルガールが完全に見えなくなったところで、口から手を離される。
「言いたいことはあるだろうが、まずは移動しよう。ここは危険だ。」
言われるがままに着いていき、洞窟にたどり着いた。
「あ、お帰りなさい!エゾシカちゃん。」
「ただいま、メネ。」
「それと、そちらは?」
小柄なアニマルガールが少々怯えながら訪ねてきた。エゾシカと呼ばれたアニマルガールも、そういえば、とこちらを向いた。
「私はリセ、ここの調査のために来たの。」
「調査?ってことは、ヒト?」
「前にいたのとは違うヒトか。前のヒトは?」
メネもエゾシカも、首をかしげる。前の、とは昨日の女性だろうか。
「彼女は・・・、彼女は病気で休むから、代わりに私が来たの。」
「病気かぁ、ならしかたないなー」
この時ばかりは、相手がアニマルガールであることに感謝した。
「あなたたちのことも聞かせて?」
「あっ、ごめんね!質問ばかりしちゃって!私はヒメネズミのメネ!で、こっちが」
「エゾシカだ。よろしく。」
「ありがとう、よろしくね。それと、少し質問が・・・」
その時、3人のアニマルガールが焦った様子で洞窟に入ってくる。
「ルー、ニサ、それにビー、どうしたそんなに・・・」
「エゾシカちゃん!!ワコウちゃんが!!」
「何!?」
エゾシカが目つきを鋭くし、角を模した得物を手にする。
が、ウサギ、だろうか。彼女が首を横に振りながらエゾシカを制する。
「もう、完全に飲まれちゃったよ・・・。」
「っ!!」
怒りに震え、得物を地面にたたきつける。
(飲まれる・・・?セルリアンに飲まれたの?・・・ここに居続けるのも悪いし、一度戻ろう。)
「私、少し外しますね。」
「・・・あぁ、そうしてくれると、助かる。帰りは気を付けて。」
調査報告3
アニマルガールとの接触に成功。
名称確認済み2、未確認3。
本日の調査中に未接触のアニマルガールが一人セルリアンに飲み込まれたとのこと。
また、それとは別に左手が黒くなっているアニマルガールを確認。
5月24日 13時02分
記録者 高田リセ No.1-230ABK
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