試験

チャイムと同時に問題用紙を翻す音がいくつも重なる。

真っ白な答案用紙の上をさらさらと鉛筆が走っていく音がまばらに、教室に張り詰めた沈黙の中に差し込まれる。


焦っちゃいけない。まずは問題全体にさっと目を通す。

「問1 海面上昇による陸地面積減少の発端となった現象は何か」

これまで参考書で幾度となく見た問題だ。なんだか肩の力がどっと抜けた気がした。

並んだ2枚の世界地図も、もう見飽きている。

1枚は2000年当時のもの。

もう1枚は2100年頃のもので、1枚目と比べると陸地面積がかなり減っている。

美沙の言っていた噂は本当だったらしい。

卒業前の試験は事実上全員合格させるためのものだって。

それでも隣で鉛筆を走らせる美沙をちらっと見ると、その表情には気の抜けたところは少しもない。

そのまま小さく周囲を見回すと、一学年10人しかいないクラスメイトは皆緊張の面持ちをしていて、私は少し気が引き締まったような感じがして問題用紙に視線を戻す。

「問2 陸地面積減少に対して、人類が取った対策を100字以内で記述せよ」

「問3 その対策を明文化した、2149年に採択された国際条約は何か」

よかった、その後の問題も簡単そうだ。

私はさらさらと、解答用紙に鉛筆を走らせていく。

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