第8話 星宮桜乃⑦

 劇は無事に終わった。

 予想以上にお客さんの反応が良く、

 盛大な拍手がしばらく続いた。


 空の心配が無駄に思えるくらい何もなかったのだ。


 ・・・何もなかったか。

 心配は杞憂だったみたいだな。


 彼はその場を後にして家へと向かった。


――――――—―


 周りの声がうるさいくらい頭に響く。

 もう誰が何を言っているのかわからない。


 部員の控室。

 皆が満足そうにしている中、桜乃だけは自分自身と戦っていた。


 —―周りに悟られるな。 最後まで自分を演じろ。 

 しかし本人の意思とは関係なく、それは彼女の体を蝕んでいく。

 顔色も悪くなり、 徐々に息も荒くなる。

 そんな体調の変化に部員も気づき、

 桜乃の元へ駆ける。


 —―誰か先生呼んできて!!

 —―救急車を呼んで!!

 —―星宮さん!? 星宮さん!!


 周りの声はまるで雑音ノイズのように頭の中に激しく流れる。


 彼女の意識は徐々に闇の中へと消えて行った。


――――――—―


 少年が目を覚ましたのは夜九時過ぎ。

 電気はついておらず、窓から月明かりだけが家の中を照らしていた。

 家へと着いた少年は激しい睡魔に襲われて眠っていたのだ。


 いけない眠ってしまった。

 今何時だ・・・!?


 空は携帯を見るとすぐさま飛び起きた。

 着信の件数は百を超え、

 メールの件数は二百を超えてた。


 そしてメールの記録を辿っていく。


 『星宮が病院へ運ばれた今すぐ来て!』

 『桜のがはこばれて!とnかく早くきて!』


 メールの大部分は演劇部の顧問、 松原楓と桜乃の母親からだった。


 待って!?一体どういう・・・え・・・


 彼は最新のメールを見て顔が青ざめた。


 『桜乃がたった今、息を引き取った。 』


 それはついさっき5分もしない間に送られたメール。


 少年の思考は完全に止まってしまった。


 しかしそれを見透かしたかのように、


 ピンポーン!!


 空の思考を呼び戻すかのように

 家の中にチャイムが響いた。






 

 

 

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