プロローグ2

ネット上の噂話

A「なあなあ、誰か知ってるやつはここにいるか? この平和な日本のどこかで、死神が開催している怪しいゲームがあるらしいっていう噂なんだけどさ」


B「その噂話なら、オレ、知ってるぜ。少し前にディープな都市伝説を専門に扱うサイトで見た覚えがあるけど。たしか自分の命を懸けてするゲームみたいだぜ。もっとも噂話だから、どこまで本当なのか眉唾もんだけどな」


C「はいはい、それならぼくもネット上で書き込みを見たことがありますよ! そのゲームに勝てば、難病でも不治の病でも治してくれるっていう話みたいですよ!」


D「ふんっ、胡散臭さ百パーセントだな! この世の中に、そんなもんを信じるバカがいるのか? ていうか、もうちょっと現実味のある話をしようぜ」


A「興味のない人はさっさと帰ってくれてもいいんだぜ。ウソかどうかなんて関係ないんだよ。俺たちは都市伝説をネタにして楽しく話が出来れば、それでいいんだからな」


D「どうやら電波人間には正常な人間の忠告は聞こえないみたいだな。耳が悪いのか、それとも、そもそも頭の中身がかわいそうな神経しか持ち合わせていないのか。いずれにしても残念な人間みたいだな」


A「みんな、自称正常な人間様の意見はムシして、こっちはこっちで話そうぜ」


B「オッケー」


C「Dさん、ごめんなさい」


D「勝手にしろよ! おれはそんなゲームは絶対に信じないからな!」


A「さあ、話を再開するぜ。――それで、そのゲームにはどうやって参加をするんだ?」


B「死神のゲームなんだから、死神様が参加者を決めているんじゃないのか?」


A「じゃあ、その死神にはどうやって連絡とるんだよ? まさか現代風にメールでやりとりするのか?」


B「さあな。そこまで詳しいことはネット上には出ていなかったからな」


C「えーと、Aさんはそのゲームがあったとしたら参加したいんですか?」


A「俺は単純に知的好奇心に飢えているだけで、そんなゲーム、参加はお断りだな」


B「オレもこうして、あーでもないとか、こーでもないとか、楽しく話をするぶんにはいいけど、実際にゲームに参加したいかと聞かれたらノーだな」


D「二人とも威勢のいいこと言っていたわりには小心者だな! とんだチキン野郎ってことか!」


A「みんな、部外者の意見はムシしようぜ!」


C「えーと、あの……おふたりの言葉を否定するつもりはないんですが、ぼくはそのゲームが本当に行われているのならば、ぜひ参加してみたいです!」


A「はあ? まじかよ?」


B「おまえ、頭、大丈夫か?」


C「はい、大丈夫ですよ。だってぼくの知り合いが、そのゲームに実際に参加したんですから!」


A「!!!!!!」


B「??????」


C「あのー、本当なんですよ。ぼくはウソなんかついていないですからね!」


A「ひょっとして、おまえも頭に電波が飛び交っている人間なのか?」


B「それとも、まさか荒らしにきたんじゃねえだろうな!」


D「おっと、さっきまであんなに仲が良かったのに、もう仲間割れが発生したみたいだな。本当に笑える連中だぜ!」


C「違います、違います! 二人が疑うのはもっともですが、これは本当の話なんです! さっきネットの書き込みを見たと言いましたが、その書き込みをした人に連絡を取ったんです。そうしたら、その人の知り合いが実際にゲームに参加したって教えてくれたんです!」


A「あのな、君はどうやらまだ若いみたいだから、おれが年長者として忠告してやるけど――知り合いの知り合いっていうのは、もっとも信じられない情報のソースなんだぜ」


C「でも、その人はゲームに勝って、見事商品をゲットしたそうなんです!」


A「――なるほどね。君は場を盛り上げる為に、あえてそう言ってるだけなんだろう? ネット上にはよくいるよ、君みたいなやつが。みんなの気を引くたくて、一生懸命に話を盛ろうとするんだよな」


B「なんだ。そういうことか」


C「違います! 違いますから! ぼくは本当に――」


?「──突然、横からすいません。わたくし、紫人しびとと申します。皆さんの話がとても興味深かったので、こうして会話に参加させてもらいました」


A「いきなりなんだ? あんた、何者なんだよ?」


?「はい、わたくし、死神の代理人をしている者でして──」


A「はあ? シニガミ?」


B「死神って、あの死神のことか?」


C「やっぱり死神は実在したんですね!」


?「はい、わたくしが言ったのは『あの』死神のことです。せっかくですから、わたくしが皆さんに、死神が開催するゲームについてご説明いたしますね。ただし、最初に注意しておきますが、この話は絶対に他言無用でお願いします。もしも、この話を口外したら、皆さんの命の保障はいたしかねますので──」


A「おいおい、マジかよ。とうとう本物の電波人間が来ちまったぜ。悪いけど、おれはここで降りるぜ。本物の電波人間とちゃんとした話が出来るわけがないからな!」


B「オレも抜けさせてもらう。これ以上話に付き合っていたら、明日の仕事に差し障るからな」


C「ぼくはまだ話を続けますよ! ねえ、死神の代理人さん、もっと詳しい話をぜひ聞かせてください!」


?「もちろん、いいですよ」


D「――なあ、あんた、本当に死神の代理人なのか?」


?「そうですよ。あなたも何かわたくしに聞きたいことでも──」


D「あんたに頼めば、例のゲームとやらに参加させてもらえるのか?」


C「Dさん、急にどうしたんですか? さっきはあんなに死神のゲームのことをバカにしていたのに──」


D「おまえは黙ってろ! 俺はこいつに聞いているんだ!」


?「どうやら、あなた様は何やら深いお悩みを抱えていらっしゃるようですね。──分かりました。あなた様自身についてのお話を、ぜひとも詳しくお聞かせ願いますか? その話の中身次第では、ゲームへの参加を認めますが――」


D「実はな、ちょっとしたゴタゴタに巻き込まれちまっていてな──」


C「ヤバイよ、ヤバイよ! ぼく、今、本物の都市伝説を体験しちゃってるよ! いつかこのことをネタにして小説でも書こうかな……。いや、ダメか。このことを口外したら殺されちゃうんだった──」

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