111  氷の女王XIV

 ――――さて、どうしたらいいのやら……。昔を思い出してしまったじゃないか。



 ――――あの時の意味がようやく理解できる。



 デミトロフはしゃがみ込んで、銃の手入れを終えると、弾を補充し、壁の死角から双眼鏡でエミリーの場所を突き止める。



 北から南に時計回りに歩き、エミリーの姿は見当たらなかった。



 ――――と、なると西側か……。



 デミトロフは双眼鏡を床に置き、狙撃銃を両手に持って、急いで西側に回る。



「どれ……」



 デミトロフはスコープを覗き込んで西側を見た。



「‼」



 デミトロフは何かに気づきすぐにしゃがみ込む。



 と、同時に反対側の壁から鈍い音が聞こえた。よく見ると、弾丸が食い込んだ跡が残っている。



「やはり、そこにいるのか……」



 ゆっくりと立ち上がって、壁に隠れて様子を窺う。



 ここからおよそ二百メートル先に人影らしき姿が黙認できる。



 ――――あそこか。



 デミトロフは呼吸を整えて、エミリーの前に姿を現す。




 ――――やはり出てきましたか。私と正面から勝負するつもりですね。



 エミリーは、スコープ越しに見えるデミトロフの姿を捉えると、フッと笑う。




「お前ら、よく見ていろ。ここからが面白いところだ」



 ハウロックは、目を離さずに二人の行く末を見守る。



 ――――ここが最終局面か……。



 ――――確かに見ている奴からにしては面白くない戦いに見えるが、これは達人と達人にしかできない芸当だ。



 ――――お互いに知り尽くしているから最後は銀弾シルバーブレットで決着をつけるってわけか……。

 ハウロックは、最後の決着を信じる。




 ――――エミリー‼




 ――――ジョン‼

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