第5章  剣の魔導士とそこにあるもの

057  剣の魔導士とそこにあるものⅠ

「はっ、はっ、はっ、はっ……」



 紺色のマントを羽織り、フードをかぶった少女が街を駆け抜ける。



 南へ南へと走り続け、曲がり角を何度も曲がり、建物内に入る。



 階段を上り、一つの部屋の前に立ち止まると、その勢いで扉を開け、部屋の中に入る。



 体力のない体を運んできた足は崩れ、前に倒れこむ。



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」



 胸を押さえながら床に倒れたまま、心臓の鼓動を落ち着かせようと自力で支配しようと感情を抑える。

 流れる汗がポタポタと床に落ちる。



「ど、どうしたんですか⁉ 二葉、顔色が悪いですよ‼」



 三久は様子のおかしい二葉に近寄ると体を起こして、膝の上に顔を乗せ、彼女が落ち着くまで待った。

 少し、怪我を負った所が何箇所かあり、血も流れている。



「三久、二葉が帰ってきたの? じゃあ、裕也もかえ……って、どうしたのよ! 怪我しているじゃない!」



 二葉が帰ってきたのに気付いた一花が、ベットから立ち上がって近づくと、ぐったりとしている二葉を見て驚いた。



 息が上がって、共に行動していたはずの裕也の姿も見当たらない。



 それに二葉が左手に持っていた、折りたたんである一枚の紙に目がいく。



 それを取り上げて開くと、中には何か書かれていた。



「ちょっ、これ……。あんた、裕也はどうしたのよ! ねぇ、二葉!」



「一花、落ち着いて‼ 一体、それには何が書いてあったのですか?」



 三久は一花を落ち着かせ、ゆっくりと床に座らせる。



「落ち着きましたね。それを見せていただけますか?」



「あ、うん……」



 一花は三久に二葉が持っていた紙を渡す。



 じっくりとそこに書かれたある言葉を一言一句読み終えると、三久は溜息をついた。



「はぁ……、なるほど、そういう事ですか……。どおりで二葉しか帰ってこないはずです。それよりもまずは二葉の治療からです一花、二葉をベットの上に寝かせておいてください。私は治療するための材料を今から用意します」



 三久は倒れている二葉を一花に渡し、ベットに寝かせてもらう。

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