056  ウエストシティの内戦XIX

 裕也はそのまま倒れ、意識を失った。



「手こずらせおって……さすが炎の魔導士の名は伊達じゃないって事だな」



 マーロスは歩み寄ってきて、再びブレスレットを赤く光らせると、獣を元の男の姿に戻した。



「ウェスト。こやつを地下牢にぶち込んどけ。そうだ、特製の魔封石で両手を固定しておけ。魔法や錬金術を使われたら厄介だからな」



「分かりました。教主様、もう一人の女の方はいかがいたしましょうか?」



「ふん。そんなのほおっておけ。何も出来ぬさ。私は軍との電話会談をして来る。後の事はよろしく頼むぞ!」



「承知しました。お任せください」



 ウェストは意識の失った裕也を持ち上げると、地下牢へと向かった。



「全く、派手にやってくれたわ。まぁ、これくらいは当然想定内か……」



 マーロスは不敵な笑みを浮かべて、一人、講堂の中で笑った。



 ――――賢者の石に黒魔法、これで十分な実験ができる。だが、白魔法が完成できなければ……。



 ――――いや、それは仮定に過ぎない。



 ――――まあ、それは研究の中でじっくりと味わさせてもらおう。



 マーロスは、自分の部屋である教主の部屋へと戻って行く。



 戦闘があった行動は、黒魔法を増幅させた賢者の石によって元の形に修復されていた。

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