052  ウエストシティの内戦XV

 二葉はなぜか呆れる顔を裕也に見せずに深々と溜息をついた。



 ――――本当にユーヤは……。



 そう、言葉にはしないが二葉は目の前でしゃがみ込んで色々と準備を始める裕也を見ながら二葉はトイレ内の個室の便器に座って、自分のタロットカードを取り出す。



 愚者から始まり二十二枚、すべて揃っているわけではないが、今、自分が所持している十三枚の精霊たちは二葉の呼び出しに応じるようにしてある。



 裕也は女子トイレの中央に錬成陣をチョークで描き、持ってきた道具をアイテムボックスから取り出して、錬成陣を発火装置の重要資源として、針金や電気コードを繋いでその周りに置き、布に描かれた錬成陣をかぶせて錬成させると、床は元の状態に戻っていた。



 裕也は魔導士ではあるが、少し錬金術を使える魔導士である。二刀流の持ち主は他にもセントラル中央司令部のデミトロフ大佐も同じ使い手である。



 魔導士が錬金術を習うのは高度な技術が必要であり、魔力回路が全く違うのだ。だから、普通の人間はどちらかに一つしか覚えることができない。



 だから、二つの技術を交互に使う術師は、体に大きな負担を負う場合もある。



 ————よし、これで一つ目の罠は出来たか……。



「二葉、次の場所に向かうぞ」



「うん」



 二人は行動に戻るために来た道を戻り、列に賛同しようとするが、さっきまで大勢いた人々がいなくなっている。急いで走り、講堂の中を見る。



 中は誰一人いなく、音すらしていなかった。



 バンッ!



 何かが閉まる音がした。



「何っ‼」



 気がつくと、後ろの扉がいつの間にか閉まっている。さっきまで誰もいなかったはずなのに扉がいきなり閉まったのだ。



「おやおや、餌を追って檻に入ってきたのはたったの二人でしたか……」



 と、講堂内に声が響き渡った。



「誰だ! どこにいやがる‼」



「ここだよ!」



 と、行動の奥に設置してある階段からゆっくりと坊主頭の男がゆっくりと降りてきた。



「いやぁ、君たちの噂はかねがね聞いているよ。炎の魔導士」



「そりゃ、どうも……」



「そう言えば、なんで信者たちが消えたのか訊きたそうな顔をしているが……」



「そのことに関してはタネも仕掛けも分かっている」

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